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【社会】春闘2018 賃上げ 伸びぬ手取り

2018/02/12

3%実現でも 増税、保険料で半減

 ここ数年の春闘で会社員の賃金は上昇しているとされるが、暮らしが楽になったという実感は乏しい。背景にあるのは増え続ける社会保険料や税金だ。民間シンクタンクの試算では「手取り」を維持するだけでも1・5%の賃上げが必要とされており、今春闘で政府が要請する「3%の賃上げ」が実現しても、そのうち半分は増税などで帳消しになってしまうのが実情だ。

 大和総研の試算によると、税制が変えられた影響などで、夫婦のどちらかが働く「片働き」の年収500万円の世帯(子ども2人)の手取り収入は、2011年と比べ17年は25万4800円減った。

 内訳は、社会保険料では厚生年金の保険料率が17年まで毎年原則0・177%(個人負担分)ずつ引き上げられるなどし、手取りが約5万3000円減少。14年には消費税率が5%から8%に上がったことで約8万8000円の増税となり、実質的に手取りが減った。この間の子ども手当の見直しで受給者の大半が減額となったことも手取りを減らした。

 共働きで年収1千万円の世帯(同)の場合は、11年と比べて17年は約38万円減った。消費税増税の影響が約17万円、社会保険料で約11万円減ったことなどが響いている。「片働き」の年収300万円の世帯(同)でも全体で約20万円減少した計算だ。

 さらに、19年10月には消費税率10%への引き上げが予定されていることから、共働きで年収1千万円の世帯の2020年の手取りは、11年と比べ約47万円減ることになる。

 試算を行った大和総研の是枝俊悟氏は「増税や物価上昇などを考慮すると、毎年1・5%程度の賃上げで、実質的な可処分所得(手取り)をようやく維持できる」と指摘している。

 内閣府の統計「国民経済計算」をみても、第二次安倍政権が発足した12年度から16年度までの間、働いた人が受け取った額面の総額に近い「雇用者報酬」は約16兆8000億円増えたが、手取りに相当する「可処分所得」は約7兆9000億円しか増えなかった。

 17年の賃上げ率(経団連調べ)は、大企業で2・34%、中小企業では1・81%と1・5%をギリギリ上回るくらいの水準。是枝氏は「大企業従業員でも実質的な手取りの上昇率は1%にも満たず、ほとんどが増税などで打ち消されている」と述べており、賃上げの実感を得るためには大幅な賃上げが必要となっている。(木村留美)