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【社会】明治制定の「応召義務」 拒めぬ診療 働き方改革論点

2018/01/16

医師の命 板挟み

 医師の働き方改革に関する厚生労働省の検討会が15日、東京都内で開かれ、診療の求めを原則、拒めないと医師法が規定する「応召義務」を今後の論点として挙げた。医師のワーク・ライフ・バランス確保のための負担軽減を前提としており、患者が求める診療機会の確保との両立が焦点。検討会は2018年度末までに最終報告をまとめる方針で、踏み込んだ議論となるのか注目される。

 医師の応召義務は明治時代に制定され、いつでも診療を受けられることの根拠とされているが、過労死遺族らから「長時間労働の一因」との指摘もある。15日の検討会では、出席した委員から「社会情勢が違うときにできた考え方。現代社会に合うのか」との意見も出た。

 この日示された論点整理案では、医師の長時間労働の背景には、宿直やオンコール(院外待機)、医療技術の進歩に対応する自己研さんがあるとした。その上で、社会情勢や働き方、医療テクノロジーが変化する中、検討するべき課題の一つとして応召義務を提示。患者の診療機会が損なわれないように、医師個人ではなく医療機関など組織が対応することも想定し、海外の例を踏まえながら在り方を議論していくことを提案している。

 時間外労働(残業)の上限は、(月平均おおむね80時間とされる)過労死ラインを超えることに慎重であるべきだとの意見を付けた。

 また、すぐに取り組める緊急対策案として(1)医師の在院時間を的確に把握(2)労使協定(三六協定)で定めた上限時間を超える時間外労働がないか確認(3)薬や検査手順、入院の説明などの業務を医師以外の職種に移管-も示された。次回の検討会で取りまとめ、早急に打ち出したい考え。

 政府が昨年3月に「働き方改革実行計画」を策定したことを受け、厚労省は同8月に医師の働き方に関する検討会を設置。労働実態などの議論を進めていた。

【医師の応召義務】 医師法19条は、医師は正当な事由がなければ、診療の求めを拒んではならないと規定。医師が不在だったり、病気だったりした場合を除き、診療時間外などの理由では診療の求めを拒否できないとされている。明治時代に制定された旧刑法に同じ趣旨の条文があり、かつては罰則も設けられていた。現在、罰則はないが、違反した場合は「品位を損する行為」とみなされ、医師免許取り消しなどの対象となる可能性もある。