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【暮らし】企業の休憩室、快適に 社員交流など効果

2017/10/09

 森をイメージした空間やボルダリングの壁、カフェ風の机に椅子-。企業の休憩室が快適に様変わりしつつある。働く人には、体を休めつつ気分転換できるなどとおおむね好評。リフォームなどで整備した企業側は、社員同士で対話しやすい雰囲気をつくり、仕事の成果につなげてほしい狙いもあるようだ。


 JR名古屋駅前のビルの三十階。フロアの一角約四十平方メートルに、森をイメージした緑の空間が広がる。IT企業「エイチーム」(名古屋市中村区)のリフレッシュスペース(休憩エリア)だ。


 森を抜けるとオフィススペース。ゲーム開発担当の社員がパソコンと格闘している。「室内作業が多く、外出の機会が少ない社員にとって、リラックスできる貴重な場所です」。広報担当の岡部サエマさん(29)が説明する。


 土足厳禁のエリアには、使い心地良さそうなクッションやハンモックがあり、せせらぎや鳥のさえずりがBGMで流れる。


 オフィスには他にも、突起物をつかむなどして登るボルダリング用の壁もある。高さ約二・八メートルで、ウェブサイト担当の谷本輝(ひかり)さん(26)は休憩時間や就業後に楽しむ。「運動不足を解消でき、頭も切り替えられる。他部署の社員とのコミュニケーションにも役立った」


 同社執行役員の光岡昭典さんは「充実したオフィスに見合う働きをしようと社員の意欲が高まり、就職希望者の増加にもつながっている」と話した。


 JR東日本の主要駅でショッピングセンターを展開する「ルミネ」(東京都渋谷区)も快適な休憩室づくりを進める。


 大宮店では、女性専用休憩室をカフェ風にリフォームした。テナント店員からの「わずかな時間でも、ゆったりくつろぎたい」との要望に応えた。カフェ風のカウンターテーブルを設け、ソファも座り心地よいものにした。ルミネの担当者は「店員らの満足度が接客サービスの向上につながる。『店員もここで働き続けたいと言っている』とテナント側の反応もよい」と話す。


 オフィス環境に詳しい家具メーカー「イトーキ」(大阪市)企画本部長室室長の重綱(しげつな)鉄哉さんは「求められる仕事の成果が処理量から創造的なものに移った」と指摘。快適な休憩室がただちに生産性を向上させなくても、「人と人が関わりやすくなることで、仕事の気づきやヒントが生まれやすくなる」と指摘する。


 働き方の傾向を調査研究する岡村製作所オフィス研究所(千代田区)の鈴木勇二所長は働く人への好影響も指摘する。「企業が大切にしてくれていると感じ、企業に愛着を抱きやすくなる」と話す。さらに「企業が人材をつなぎとめ、学生にも興味を持ってもらえる」と採用面への効果も指摘している。


 (寺本康弘)

森をイメージしたリフレッシュスペース=名古屋市中村区の「エイチーム」で
森をイメージしたリフレッシュスペース=名古屋市中村区の「エイチーム」で
さいたま市のルミネ大宮店の女性専用休憩室=ルミネ提供
さいたま市のルミネ大宮店の女性専用休憩室=ルミネ提供