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【社会】「働き方」一括法案で対立

2017/08/31

経営側/生産性向上する
労働側/制度趣旨異なる

 厚生労働省は30日の労働政策審議会分科会で、収入が高い一部専門職を労働時間規制から外す「残業代ゼロ」制度(高度プロフェッショナル制度)創設を柱とする労働基準法改正案と、罰則付きで残業時間の上限規制を設ける同法改正案を一本化する方針を説明した。この法案は労働者の働き方に大きな影響を与える。経営者側が企業の競争力強化につながると歓迎したのに対し、労働者側は「長時間労働を助長する」と反対した。

 ◇ ◇ ◇

 厚労省は労基法改正案のほか、正社員と非正社員の格差を縮める「同一労働同一賃金」に向けた労働契約法改正案など七法案を一括法案として国会提出する方針も示した。

 意見が最も対立したのは、労基法改正案の一本化。連合の村上陽子・総合労働局長は、残業時間の規制をなくす「残業代ゼロ」制度と残業上限規制は趣旨が異なると指摘し「なぜ一本化する必要があるのか理解できない」と疑問を投げ掛けた。

 これに対し経営側は「ワンパッケージにすることで労働者の健康確保と生産性向上が実現できる」(経団連の輪島忍・労働法制本部長)などと利点を挙げた。

 「残業代ゼロ」制度でも議論は平行線だった。労働側は「長時間労働につながる」と反対したが、経営側は「多様で柔軟な働き方の実現につながる。グローバルな人材獲得競争に勝てない」と早期導入を求めた。

 政府は一括法案を秋の臨時国会に提出する。目的が違う七法案を一括法案にするのは、審議時間を短縮するためだ。野党側は「残業代ゼロ」法案には反対しているが、同一労働同一賃金の趣旨には賛成の立場。関連法案も一括法案に入れ、政府は臨時国会での成立を目指す。

 「残業代ゼロ」制度の創設を盛り込んだ労基法改正案は2015年春に国会提出されたが「過労死を招きかねない」との懸念が強く、一度も審議入りしていない。