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【愛知】豊田鉄工の業務数値化 事務部門にカイゼン応用

2017/08/13

市場に危機感 生産現場「まだ甘い」

 豊田鉄工(愛知県豊田市)が進める事務部門の効率化の特徴は、原価低減を追い求めるトヨタ流の生産改善を応用したことにある。仕事の中身をつぶさに分析して無駄に気付かせる発想は、働き方改革に悩む他社の参考にもなり得る。

 仕事の負担を時間で数値化した豊田鉄工の「原単位」には、研修会の準備も含まれる。「講師選定50分」「会場選定25分」「説明資料の作成115分」と細かく定める。

 商談が長引いたり、飛び込みの顧客対応が入ったりと、予測が難しい仕事は多い。それでも近藤信介常務取締役は「勤務実績に基づいて原単位を見直し続けた結果、突発的な要素も平均化され、ぶれがなくなってきた」と語る。

 ここまで徹底する背景には、低迷する国内の自動車市場への強い危機感がある。仮にトヨタの国内生産が現状の年300万台体制から、250万台に落ち込んでも、同社は黒字を維持できる体制づくりを2019年までに目指している。

 近藤氏は「無駄な業務の洗い出しで、損益の計算がはっきりできるようになった」と説明する。

 豊田鉄工が最初に着目したのは業務スピードの個人差だった。報告書の作成など、手際の良い社員の進め方を手順書にまとめ、他の社員にまねさせている。

 ただ、取引先から厳しいコスト削減を求められる生産現場からは「まだまだ原単位の設定が甘い」との指摘も出ているという。個人の能力差をどう反映させるかは引き続き課題だ。

 膨大な資料が本当に必要かも精査したところ、漫然と作るだけで実際には用途のない書類が多いことに気付いた。生産現場では「後(あと)工程」と呼ばれる自分の後ろのラインを意識し、部品の流し方などを工夫する。書類も「後で使う人が何を求めているのかを考えないと」(幹部)という。

 さらに本年度は定例の社内会議にメスを入れた。「だらだらした話し合いはいらない」(幹部)と、会議は1時間以内、配布資料はA3で一枚までに徹底している。決まった曜日と時間に集まる「常識」を見直し、より中身の濃い議論を促す考えだ。