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【暮らし】なくそう長時間労働/「過重労働の無法地帯」教師の声

2017/05/29

 長時間労働の是正が目指される中、全国の教師たちがインターネットで知り合い、自らの働き方改革に向けて意見を交わしている。教師たちは「自分たちの疲弊が、教育の崩壊につながりかねない」と危機感を強めている。今月中旬の土曜日に名古屋市内であった有志たちの集まりで、教師たちの生の声を聞いた。

 「自分で労務管理しないと、過労で倒れそう。他校の状況を知りたかった」。富山県から駆けつけた30代の中学校女性教諭は、参加理由をこう話した。

 インターネットでは現在、全国の50人ほどが会員制交流サイト(SNS)などを通じて交流しているという。部活動の指導などが教師の長時間労働の主因の一つになっているという認識で一致し、先月「部活改革ネットワーク」を結成。情報交換などを続けていくことにしている。この集まりには、ネットワークに参加する中部、北陸地方の有志八人が参加し、初めて顔を合わせた。

 富山県の女性教諭は、ストレスから心療内科に通院した時期もある。教職員組合に状況を伝えたが、労働環境は改善されないままだという。訴える場のなさを感じていたところ、ネットで同じ思いの教師たちと知り合った。この日は、午前中に部活動で生徒を指導した後、駆けつけた。

 規定勤務時間は平日午前8時15分から午後4時45分。だが、実際にはその後、部活動などで帰宅は毎日午後8時すぎ。休日も部活動があり、ゴールデンウイークは5日のうち3日がつぶれた。

 公立学校の教員の給与は「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」で定められている。どれだけ働いても毎月、本給の4%が「教職調整額」として一律に支給されるだけで時間外手当はない。

 生徒と交換する連絡帳に交友関係の悩みが書かれていても、返事を書く余裕がない時もある。「教師が疲弊したら、不利益を被るのは子ども。部活の時間短縮を呼び掛けたい」と思いを語った。

 今春、教諭になったという20代男性も、1カ月余りで改善の必要を強く感じ参加した。男性は、愛知県内の小学校に勤務。「疲労はすでにピーク。ずっと仕事を続ける自信がない」と話した。

 給食や休み時間も子どもから目が離せずに緊張が続く。労働基準法は四十五分間の休憩時間を定めているが、教師の場合、放課後も部活動や職員会議がある。担任するクラスには、夕飯を食べられないなど家庭に問題がある子もおり、帰宅後も気が休まらない。「親までケアしなくてはならないケースもあり、やることは際限なくある。この状況を自分たちで改善しないと」と危惧する。

 名古屋大の内田良准教授(教育社会学)は「出退勤時間が管理されず、休憩も取れず、残業代が支払われない学校は過重労働の無法地帯。教師と保護者、世間が、労働者としての教師の立場を意識し、学校内の働き方改革を進めることが急務だ」と話す。

 (細川暁子)

 <教師の長時間労働> 公立小中学校教諭を対象とした文部科学省の2016年度調査では、中学校教諭の57・7%、小学校教諭の33・5%の残業時間が、「過労死ライン」のおおよその目安とされる月80時間を超えていた。平日の平均勤務時間は11時間超で、さらに部活動の指導などで休日出勤も多いためとみられる。中学校の土日の部活動の指導時間は10年前より64分、長かった。

働き方改革について、意見交換する教師たち=名古屋市内で
働き方改革について、意見交換する教師たち=名古屋市内で