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【暮らし】要注意!!クラッシャー上司/読者から反響「自分も被害」

2017/04/03

 2月から3回にわたって連載した「要注意!!クラッシャー上司」に多数の反響が寄せられた。「うちにもいた!」「この言葉をもっと早く知っていれば…」という憤りや無念の声の数々。メールを寄せてくれた一人に体験を聞いた。

 ◇ ◇ ◇

 「再就職の活動中、たまたま寄った喫茶店で記事を読み、思わずメールしました」。愛知県知多市に住む男性(33)は話した。

 「クラッシャー上司」とは、「仕事はできるが、じわじわと部下も組織もむしばむ上司」のこと。筑波大医学医療系産業精神医学・宇宙医学グループの松崎一葉(いちよう)教授(56)が同名の著書(PHP新書)で、警鐘を鳴らした。(1)部下を精神的につぶしながら、どんどん出世する(2)自分は正しいとの確信を持っている(3)精神的に参っている部下の気持ちが分からない-が主な特徴だ。

 「以前勤めていた会社の上司がまさにそれでした」と男性は言う。

 男性は大学卒業後、大手家電メーカーの系列会社にシステムエンジニアとして就職。2010年に愛知県内の事業所に配属された。そこで会った事業所長がクラッシャー上司だった。「仕事ができると評価され、地方の子会社から所長に昇進したばかりの人でした」と男性。出世に意気込み、成果を求めた上司による“クラッシュ”が始まった。

 「とにかく、自分のやってきたことへの自信が強く、それに従わないと激高するタイプでした。机をバンバンたたきながら、『俺の若いころは、こんなの簡単にできたぞ!』と怒鳴る」。だが、今と昔では仕事をめぐる背景も技術も違う。「そう思って、最初は反論していましたが、所長と若手では勝負になりません。中堅の先輩もいたのですが、触らないでおこうという感じで傍観。自分がつぶれるしかありませんでした」

 早々と帰り支度をしながら、所長は「僕は先に帰るけど、君は無限に残業して」と言い放った。男性が母親を亡くして1週間の忌引休暇を取った際は、所長はお悔やみの言葉もないままこう言った。「おまえが休んだ間、スケジュールが全部遅れてるんだけど、どう挽回するつもりなの?」。悲しんでいる部下の気持ちが分かる人ではなかった。

 残業はあったが、月平均40時間ほど。厚生労働省が示す月45時間の基準を下回っており、労務管理としては、むしろ良心的だ。「だから、悪いのは時間ではない。仕事を苦しみに変えるのは『人』なのです」と男性は語気を強める。

 そんな仕事が1年近く続いた末、男性の不調ははた目からも明らかになった。体の震えと涙が止まらなくなり、精神科にかかる身に。所長は弁解した。「君を鍛えようと度が過ぎた」

 手遅れだった。通院のみで仕事を続けさせられていた。所長と離れるため、他の部署に移してもらったが、「引き継げない仕事だから」と異動先にも所長は仕事を依頼するメールをよこした。

 自分自身の存在が男性にとってクラッシャーになっているという事実。それが所長には理解できていないことの表れだった。男性は16年に退社。所長はおとがめもないままに事業所を仕切っているという。

 「それでも、学ばせてもらった面もあるかもしれません。待遇や休みと同時に、人の雰囲気が大事なんだと、仕事への見方が一変しましたから。今度は失敗しませんよ」。男性は再び街へと出て行った。

 (三浦耕喜)