飲食業 流出抑止に懸命

　名古屋市内で相次ぐ大型商業・レジャー施設の開業に向け、人材確保が激化している。４月に全面開業する駅ビルのＪＲゲートタワーや、テーマパークのレゴランド・ジャパンは、１０００人単位でスタッフを雇用。各施設はいち早く採用しようと好条件を打ち出し、東海地方のパート・アルバイトの時給は、過去１０年間で最高水準に達した。（石原猛、久野賢太郎）

　◇　◇　◇

　名古屋・名駅のＪＲゲートタワーには、家電量販店のビックカメラや衣料品のユニクロ、３７店が軒を連ねるレストラン街などが入居。計約４０００人の従業員が必要になる見通しだ。３日に開いた進出店舗の合同説明・面接会では、大半の企業が時給１０００円超の好条件を打ち出した。

　名古屋初出店のハンバーグ店「ミート矢沢」では、開業前後の３～５月は２００円を上乗せして時給１３００円に。運営会社の担当者は「条件を改善してから問い合わせが増えた」と説明。居酒屋「なかめのてっぺん」でも、時給を１１００円から１２００円に引き上げた。

　名古屋市中心部などを対象エリアにしたハローワーク名古屋中によると、昨年１２月の有効求人倍率は３・１１倍。全国の１・倍を大きく上回る。

　名駅周辺以外にも、大型施設の開業が控える。名古屋市港区に４月開業する「レゴランド・ジャパン」では、正社員とアルバイトの合計で約１０００人を雇用。隣接する複合商業施設「メーカーズ・ピア」でも、３月末の開業に向け従業員を集めているが、「物販や飲食店は厳しい状況」（担当者）という。

　全国のパート・アルバイトの時給水準を調査したリクルートジョブズのリサーチセンターによると、東海地方（愛知、岐阜、三重、静岡）の昨年１２月の募集時平均時給は９４３円で、２００６年の調査開始以来、最高額だった。

　飲食店のスタッフや調理師など「フード系」は前年同月から１・６％増の９１５円。宇佐川邦子センター長は「名古屋駅の大型商業施設などが時給水準をけん引している。名古屋が全国で最も人が採りづらい地域になっている」と語る。

　一方で既存の飲食店も、人材の流出を防ごうと対抗する。和食レストランのサガミチェーン（名古屋市）は昨年４月、アルバイトやパートの従業員が各店舗の副店長に昇進できるようにした。愛知県内の店の時給水準は１年間で３０円ほど上がり、担当者は「やりがいの持てる職場づくりで、優秀な人材を確保したい」と話した。