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【働く】材料の混ぜ具合 試行錯誤 化学メーカーで接着剤を開発

2016/12/05

 数万個の部品の集合体である乗用車に、強力な接着剤は欠かせない。大手接着剤メーカーのアイカ工業(愛知県清須市)で、新製品の開発チームを率いる。同社が手掛けるのは、ヘッドランプの部品の接着だ。

 「接着後10年は持つ必要がある。接合部の隙間から雨が入らないようにしたり、走行時の振動や熱に耐えたりと、さまざまな性能が必要です」

 接着剤を作るのに数十種類の化学物質を混ぜ合わせる。「入れる材料すべてに意味がある」。混ぜ具合によって接着力を増したり、衝撃吸収力を上げたり工夫できる。逆に、性能を出そうと添加した材料が、別の性能を落とすこともあるため、試行錯誤が欠かせない。試作品は、熱したり、さまざまな液体に入れたりするなど数カ月の試験を実施。よりすぐられたものが製品化される。

 最近の乗用車は、ヘッドランプがより大きく複雑な形状になり、部品のひずみも大きくなりがち。「メーカーが要求する接着剤の性能も厳しくなっている」。同じような性能が必要な太陽電池のパネルも手掛ける。

 開発チームは若手が中心の13人。平均年齢20代後半。「若手なので、変化に対応でき、とことん挑戦できるチームです」。やりがいを感じるのは「狙った性能が出たり、自分が出した商品の採用が広がったりしたとき」という。

 茨城県鹿嶋市出身。小学生のころから理科が好きで、東京都内の大学では医薬品開発の研究に取り組んだ。製薬会社への就職を考えたが、就職活動で「製品の開発を通じ、人の顔が見える仕事」と知り、化学メーカーを選んだ。

 ものと向き合うことが多い仕事だが、実際は「納入先の企業とのコミュニケーションがとても大切」。ランプメーカーの担当者と会って、求めている性能や、どんな設備で生産するかを知り、最適な接着剤を開発することが求められるからだ。出張で国内外の取引先を巡る日々を送る。

 「接着剤の豊富なラインアップが強み。この分野で世界のトップメーカーになりたい」 文・写真 稲田雅文

接着剤の性能を試験する青木努さん=愛知県のアイカ工業R&Dセンター甚目寺研究所で
接着剤の性能を試験する青木努さん=愛知県のアイカ工業R&Dセンター甚目寺研究所で