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【地域経済】求む「けんせつ小町」 製造業の中部 採用苦戦

2016/11/30

30代以下の女性技術者わずか0.05%

 建設業界で働く女性の比率を倍にしようと、業界団体の日本建設業連合会(日建連・東京)が取り組んでいる。女性に「けんせつ小町」の愛称を付けて会員企業の採用を後押ししているが、中部地方は製造業が集積するだけに苦戦しており、現場の魅力発信や働きやすい環境整備に努めている。(日下浩樹)

 ◇ ◇ ◇

 「工事現場で働いていると言うと驚かれる」。こう話す名工建設(名古屋市)の小瀧諒子さん(26)は社内唯一の女性現場監督だ。橋の橋脚を支える杭(くい)の工事を担当しており、職人の安全管理や作業の手順を考えたり、工事の記録書類をつくったりする。

 約950人の社員のうち、女性は64人いるが、技術職に限ると6人のみ。会社としては学生のインターンシップを建設現場で実施し、仕事の魅力を伝えている。それでも人事担当者は「東海地方では技術系の大学生が少ない上、製造業に興味を持つ学生が多い」と頭を悩ませる。

 女性の少なさについて、小瀧さんは「土木の仕事を一般の人が知らないからでは」と指摘する。日建連が2014年に実施した会員企業調査で、技術系社員の女性比率はわずか1・5%。このため業界で働く女性の愛称をつくって女性比率を倍に伸ばそうと、同年に一般公募して「けんせつ小町」の名が決まった。現場監督から職人、事務員までを含めている。

 日建連は高年齢者の離職を踏まえ、25年までに128万人の労働者が不足すると見込む。現場作業の省力化で35万人の労力を浮かす一方、新たに90万人を雇用し、うち20万人を女性が担う目標を掲げている。

 中日本高速道路(名古屋市)の小川清香さん(34)は約2年半、三重県内の新名神高速道路の舗装工事を担当した。この間に結婚もしているが、「計画したものが現場で形になっていくのがやりがい」と語る。

 同社の女性技術者は全社員約2000人の2%程度だが、採用人数は3年前の3人程度に対し、今年は10人程度に増えた。育児休暇を3歳になる年度末まで取得できるようにしており、こうした子育て支援の充実などをアピールし、今後も採用を増やしたい考えだ。

 日建連中部支部の担当者は「大手ゼネコンや行政機関などの女性技術者は増えつつあるが、現場で働く技能者を増やすのは難しい」と指摘する。昨年、支部に加盟する69社に尋ねたところ、30代以下の技術者の女性比率は0・05%。女性技術者163人のうち、現場で働くのは49人だった。

 女性が働きやすい環境づくりのセミナーを会員向けに開くほか、工業高校の生徒を現場に招いて働きがいを伝えている。