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【暮らし】長時間労働NO、待ったなし 広がる「勤務間インターバル」

2016/09/26

◆たとえば…最低8時間 休息を保障

 働く人を疲弊させる長時間労働。日々の休息をどう確保するかは、働き方改革の中でも重要な課題だ。長時間労働を減らそうと、仕事を終えた時刻から、次に仕事が始まる時刻まで一定時間を空ける「勤務間インターバル制度」を導入する企業が出てきた。

 ◇ ◇ ◇

 「ろくに寝ていないから、仕事中もボーッとしている。それでハンドルを握らせるなんて」。茨城県つくばみらい市の男性運転手(33)はこう話す。

 飲料などを運ぶ運送会社に勤める。配送を終えて車庫に戻るのは午後10時。社を出るのは同11時近くになる。「それなのに『明日は朝4時に工場に取りに来てくれ』と言われる。帰る時間もないとトラックで仮眠する同僚もいる」とあきれ顔で話す。

 会社は、経費を惜しんで高速代を出さない。一般道を通ればその分、勤務時間は延びる。「高速代を自腹で出し、寝る時間をひねり出している状態。休むことも大切なのに、これでは働き続けられない」と憤る。

 勤務と勤務の間にどれだけの休息時間を与えるか-。トラックやバスなどの運転手について、厚生労働省は連続八時間以上の休息時間を与えるようガイドラインで定めている。だが、基準があっても、必ずしも守られていない。欧州連合(EU)には、勤務間に11時間の休息を与える規制があるが、日本には労働者一般を保護するルールがないためだ。

 長時間労働は業務の安全や従業員の健康管理でも企業の足かせになりかねない。独自に「勤務間インターバル制度」を取り入れる企業も出始めた。

 通信大手KDDIは2015年7月に、就業規則で最低8時間の休息時間を与えることを定めた。インターバルが11時間を下回る日が月11回以上ある社員も、健康指導の対象にする。同社担当者は「健康的な働き方の実現は、今までは個人努力に委ねられていたが、組織的にサポートできるようになった」と言う。

◆残業減につながる

 旅行会社JTB首都圏も15年4月に9時間の休息時間を確保する制度などを導入。15年度の月平均残業時間を10時間未満に抑えることに成功した。同社は「特に管理職に時間意識を醸成してもらうよう目指している」としている。

 勤務間インターバルを設けなくても、残業禁止を徹底させることで休息時間を確保するところも。事務機器大手リコーは14年4月から「エフェクティブ・ワーキングタイム制度」を導入し、午後8時以降の残業を原則禁止した。朝の勤務も午前7時までは禁止。これにより、最低11時間の休息が得られる。

 同社では、必ず勤務するコアタイムを午前九時から午後3時半までに設定。コアタイムが終われば帰れる者は帰るよう、上司が声がけをする部署もある。この他の取り組みと併せ、15年度の平均残業時間は前年より14%減。総労働時間も年1876時間から1849時間に減った。

 同社人事部ダイバーシティ推進グループの児玉涼子グループリーダーは「取引先など相手への対応がある。世の中全体が変わらないと十分ではない」と、国全体での取り組みが必要と指摘する。

 勤務間インターバル制度については、厚労省も導入を進めたい考え。だが、制度を導入した中小企業に補助金を給付することが主眼で、「ルールを法制化する予定はない」としている。 

 (三浦耕喜)