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【暮らし】<わたしの転機> 葬儀会社の経験生かし身元保証のNPO法人で働く

2016/09/21

 葬儀会社を退職した森下俊治さん(68)=名古屋市西区=は、身寄りのないお年寄りの身元保証を手掛けるNPO法人「おひとりさま」(同市)で働き始めた。ハローワークで求人票を目にし、「人生の晩年に関わる仕事なので、葬儀会社の経験が生かせるのでは」と面接を申し込んだ。当初は軽い気持ちだったが、お年寄りの重い日常に直面。助けになりたいと思うようになった。

 病気で入院したり介護施設に入ったりすると、身元保証人を立てるよう求められます。入院代や利用料が滞ったときに肩代わりし、もし亡くなったときには遺体を引き取る人が必要だからです。でも、身寄りのない人や親族と疎遠な人は周りに頼れる人がいない。もちろん介護保険サービスの対象外。だから家族に代わって身元保証をする団体が求められるんです。

 商社勤務などを経て、30代で葬儀業界に入りました。主に担当していたのは社員教育。葬儀の段取り、宗教や宗派による執り行い方の違いなどを新人に教えました。だから葬儀に明るい自信はありますが、死に至るまでにお年寄りがどんな暮らしをしているかは思いが及ばなかった。介護保険制度すらまともに知らなかったんです。

 60~90代の男女の会員を担当しています。身元保証以外にも、老人ホームなどに入所する際には郵便物の転送を申請し、業者を手配して不要な家具を処分してもらいます。以前に住んでいた家の引き渡しに立ち会うなど、家族のようにあらゆることを手掛けます。

 少し前、未明に電話がかかってきました。担当するお年寄りの入院する病院から「危篤だから来てくれ」と。すぐタクシーに飛び乗って向かったところ、幸い持ち直しました。そのお年寄りとはタクシー代などの経費をその都度もらう契約ですが、いろんな感情が交ざってお金を請求するのが申し訳なくなりましたね。

 身元保証を手掛ける団体を縛るルールはなく、会員から預かった巨額のお金を流用した団体もあります。「私たちのような団体が存在しなくても済むのが望ましい」と思う一方、「公的な制度からこぼれ落ちる人たちのためになっている」と感じてもおり、やりがいは大きいです。

 今年1月には、20歳から吸い続けていたたばこをきっぱりやめました。担当する女性に「たばこ臭い」と言われ、「会員を不快にさせたくない」と仕事に臨む姿勢を新たにしました。70歳近くなって、これほどやる気になることと出会うとは思いませんでしたよ。

 (聞き手・諏訪慧)

「介護保険の隙間を埋める仕事にやりがいを感じる」と話す森下俊治さん=名古屋市内で
「介護保険の隙間を埋める仕事にやりがいを感じる」と話す森下俊治さん=名古屋市内で