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【学生】中小企業でインターンシップ 働くやりがいを実感

2016/09/20

アルバイトとの違いに気づく

 就職活動を控えた大学生らが、関心のある企業を知るために参加することが多いインターンシップ(就業体験)。中部地方でも知名度や商品にブランド力がある大企業が学生に人気だが、中小企業も実施する例が目立ち始めている。参加した学生の反応は?  (美細津仁志)

 ◇ ◇ ◇

 「働く大変さを体験し、自分を見つめる良い機会になった。まずは自分がどんな仕事をしたいのか、しっかりと自己分析を進めたい」。愛知淑徳大心理学部3年の佐伯さん(20)は8月23日~9月2日、業務用パンメーカー「エースベーキング」(愛知県清須市)のインターンシップに参加した。

 佐伯さんがこの会社を選んだのはパンや菓子が好きだからだ。他に名古屋市や近隣の大学から女子学生3人が参加。「食品業界で働きたい」「いろんな仕事に挑戦したい」「とりあえずインターンシップに参加したかった」と、動機はさまざまだ。

 体験メニューは製造と営業の2本立て。学生たちは隣接する関連会社の工場でパンを袋詰めした。若手社員の配達営業にも同行し、得意先の喫茶店やホテル、レストランを回った。

 学生たちが学んだことは大きい。ある学生は「言われたことだけをするのがアルバイト。社内全体を見て動くのが社員と分かった」。別の学生が「地域に密着した中小企業に勤めれば、地元で長く安定して働くことができると感じた」と感想を語った。

 同社は愛知県内の3500軒の飲食店などに卸している。人事担当の男性(51)は「社の知名度はまだまだ高くない。東海地方のモーニングという朝食文化を支えている業務に興味を持ってもらえれば」と語る。

 インターンシップは、学生が企業や仕事のイメージをつかみ、働く喜びを知るのが目的。大学によって、卒業に必要な単位として認められている。

 企業側にとっても学生に体験の場を提供することは、社内の活性化につながる。えびせんべいなどを製造する「スギ製菓」(愛知県碧南市)の杉浦敏夫社長(43)は「学生の受け入れは準備に時間がかかるが、社員にとっても、業務の大切さにあらためて気づく機会になる」と言う。

 県内の中小企業でつくる「愛知中小企業家同友会」(名古屋市中区)によると、今夏に学生を受け入れた加盟企業は前年度比1・5倍の65社。体験した学生は計134人で、ともに過去最多となった。内輪博之専務理事は「中小企業でも優良企業は多い。学生に目を向けてもらう好機になる」と説明する。

 名古屋市天白区の印刷業「マルワ」では、女子学生2人が参加した。愛知淑徳大ビジネス学部3年の竹内さん(21)は「少ない社員が全員で力を合わせている姿が、見られたことが収穫です」と語った。

 金城学院大文学部3年の加藤さん(20)は「さまざまな仕事を体験する中で、自分は、人に接する営業の仕事がしたいと思った。いろんなことへの挑戦が大切だと分かった」と笑顔を見せた。

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◆時代に合った人を育てる場

 なぜインターンシップが重視されるのか。経済産業省産業人材政策室の橋本賢二さん(35)が今月上旬に東京都内で、専門家らでつくる「日本インターンシップ学会」で講演した。

 あらゆるものがインターネットに接続する「モノのインターネット」(IoT)や人工知能(AI)の技術が進むと、多くの分野でロボットが人の仕事を担うようになるため、橋本さんは「チャレンジ精神や創造性、課題の発見力、解決力などを備えた人の育成が重視される」と指摘した。

 授業が大きく変わる文部科学省の学習指導要領の改定などに触れ、「教育は、社会全体で子どもの成長を支えるように変わる」と説明した。「実践的な学びができるインターンシップは時代に合った人を育てるのに役立つ」と強調した。

 学生が充実した就業体験をするために「受け入れる企業や経済団体などは、プログラムの質を高める必要がある」と話した。

パン作りに挑戦するインターンシップの学生(左)=愛知県清須市で
パン作りに挑戦するインターンシップの学生(左)=愛知県清須市で