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【暮らし】「女性活躍」安全第一 企業が防犯対策

2016/09/19

 女性の雇用に積極的な企業が、社員向けの防犯対策を強化している。深夜帰宅や満員電車での通勤、外回り営業など、身の危険を感じる場面はさまざま。犯罪被害への不安が消えない中、安全面への配慮をアピールして人材確保につなげたい考えだ。

 6月下旬、東京都千代田区のビルで、第一生命保険の女性新入社員約200人が防犯講習を受けた。新人研修の一環で、同社では初めての取り組み。講師は警備大手ALSOKの社員だ。

 講習では、痴漢やひったくり、ストーカーといった犯罪から身を守る方法として「電車ではドアの脇に立たない」「エレベーターでは壁を背にして立つ」などの具体策を紹介。両手を広げて不審者を払いのけるといった撃退法も実演した。

 受講者には、実際に怖い思いをした人もいる。佐藤優さん(22)は通勤電車で数回痴漢被害を受けたが、声を出せなかった。夜道で不審者に追いかけられた原田みなみさん(24)は「深夜の帰宅は不安。夜道を歩く時の注意点などを講習で知り、日々の行動に気を付けようと思った」と話す。

 2014年の警察庁統計では、刑法犯全体の被害者数では女性が三割程度なのに対し、殺人などの凶悪犯罪では女性が過半数を占める。ストーカー事件も多発し、ALSOKは「女性の相談が増えている」という。

 総務省によると、15年の女性就業者数は前年比25万人増の2754万人。働く女性は急増しているが、危険な目に遭っても自分で対処しなければならないのが現状だ。

 第一生命では今春、過去最多の522人の女性営業職を採用。入社したての20代前半の女性は犯罪被害に遭いやすいとして、防犯講習を取り入れた。安全性をアピールして優秀な人材を確保する狙いもある。企業が警備会社と連携して全国規模で女性向けの防犯講習を行うのは珍しいという。

 総合営業職推進部の上原彰人課長(36)は「女性社員の安全のため、複数で顧客宅を訪ねるなど規則を設けているが、業務時間外は自分で身を守るしかない。犯罪を未然に防ぐには本人の意識が大切」と強調する。

 女性の採用を進めるタクシー会社「国際自動車」も防犯対策に力を入れる。女性運転手の多くが、男性客から手を握られるなどのセクハラを経験しているためだ。同社は全車両に防犯カメラを設置しているほか、今年2月には運送約款を改め、乗客がセクハラなどを行った場合は損害賠償を請求すると明文化した。

 警備大手セコムは、07年に社内の女性社員らによる「働く女性の安全委員会」を設置。ホームページや企業向け講習会で、防犯や防災に関する情報を発信している。

 委員会メンバーで同社広報の寺本美保さん(34)は「歩行時にスマートフォンなどを操作する『ながら歩き』を控えるなど、できることから始めてほしい」と訴えている。

女性新入社員に対して行われた防犯講習=6月、東京都千代田区の第一生命保険で
女性新入社員に対して行われた防犯講習=6月、東京都千代田区の第一生命保険で