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【暮らし】非正規でも育休取れます 来年、法改正で条件も緩和

2016/09/05

 非正規でも育児休業を取れることを知っていますか-。育児・介護休業法(育介法)の改正により、来年1月からパート、契約、派遣など有期雇用の非正規社員は、1年以上同じ企業で雇用され、子どもが1歳6カ月になるまで契約更新の可能性があれば、育休を取れるようになる。従来の更新可能性期間が半年前倒しされ、条件が緩和された。

 現行の育介法では、有期の非正規社員が育休を取るには、育休を申し出る時点で(1)「1年以上継続して雇用されている」(2)「子が1歳以降も雇用が見込まれる」(3)「子が2歳になるまで更新の可能性がある」の3条件を満たす必要がある。

 昨年まで大手電機メーカー子会社の契約社員として働いていた都内の女性(34)は、この3条件に合わずに育休を取得できず、仕事を辞めた。女性は「1年契約で五年まで」との条件で、2011年1月に入社。15年1月に長男を出産したが、労働契約は15年末までだったため、育休取得のための(2)と(3)の条件に合わなかった。女性は「同時期に出産した正社員は育休を取って復帰できていたので、悔しかった」と話す。

 国立社会保障・人口問題研究所の調査では、働く女性が〇五~〇九年に第一子を妊娠後、育休を取って復帰できた割合は正社員は43・1%だが、非正規社員は4%にすぎない。厚生労働省の有識者研究会が昨年、非正規社員の育休取得の3条件が厳しすぎることが育休取得を妨げているとして育介法の見直しを提言。厚労省は(2)と(3)の条件について、分かりにくいと指摘されていた(2)を省き、(3)を「子どもが1歳6カ月になるまで更新の可能性がある」との内容に緩和して育介法を改正し、来年1月から施行される=図参照。

 ただ、労働政策研究・研修機構の副主任研究員で、労働法が専門の内藤忍(しの)さんは、「育介法の改正後も非正規社員は妊娠・出産する時期によっては、育休が取れない場合もある。非正規社員は、女性の雇用形態のうち6割近くを占めており、国が女性の活躍を推進しようとしているのであれば、さらなる条件緩和が必要」と指摘する。

◆「制度知らない」3割超

 非正規社員の育休制度の認知度が低いのも問題だ。

 NPO法人「マタハラNet」が昨年9月、非正規で働きながら妊娠したことがある20~50歳の女性158人に調査したところ、33・5%は非正規でも一定条件を満たせば育休を取れることを知らなかった=グラフ参照。

 知らなかった理由は「そのような制度はないと思い込んでいた」が最多だった。制度を知っていた66・5%のうち、実際には育休を取らなかった人は5割を超えており、理由は「産休すら取らせてもらえず育休までたどり着けなかったから」が最多だった。

 一方、同法人などが今年2月に企業の経営者や管理職212人に調査したところ、「非正規社員には育休がないと思う」と答えたのは24・5%に上った。

 労働政策研究・研修機構の内藤さんは「育介法に基づいた非正規の就業規則が整備されていない会社も多く、制度の周知も重要だ」と話す。
 (細川暁子)