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【三重】医師志望高校生が実地体験 志摩市民病院

2016/08/18

 志摩市の志摩市民病院で、医師を目指す高校生が臨床実習に取り組んでいる。高校生を対象にした病院研修では、医師や看護師らについて回るだけの体験が一般的だが、志摩市民病院では生徒がスタッフとして医療現場に入り、入院患者の回診やリハビリ指導などの活動に参加。患者と接しながら、医療現場の雰囲気を感じている。

 「元気ですか」「痛くないですか」。白衣を着た高校生たちが毎朝、医師とともに回診し、入院患者に笑顔で声を掛けていく。生徒それぞれに担当する患者がおり、会話を交わしながら健康状態を聞き取る。実習期間は、1週間程度。最終日を迎えた女子生徒が「今日が最後なんです」と明かすと、80代の女性患者は「散歩にも連れて行ってくれた。若い人と話していると元気になる。寂しくなるね」と涙ぐんだ。


 実習は七~八月に、伊勢市の伊勢高校と東京の西高校から1~3年生計17人を受け入れている。生徒たちは病院の官舎に泊まりながら通い、回診だけでなく、外来患者の問診をすることもある。リハビリ室や検査室でも実習を受ける。

 生徒たちは担当患者の症状を指導医に相談したり、医学書などを参考にしたりしながら治療方針を検討。毎朝、生徒と医師が集まる「カンファレンス」で発表する。「笑顔が増えてきた」「スムーズに歩けるようになった」などと気付いたことを報告。「リハビリにも意欲的。疲れない程度に時間を増やしてもよいのでは」といった提案もあった。

 参加した伊勢高3年の奥山さん(18)は「医師と患者さんの信頼の厚さを感じた。私も患者さんと向き合える医者になりたい」と話す。同校3年の野村さん(18)は「地域の医師が不足していることを知った。過疎地域で求められるさまざまな医療に対応できる医師を目指したい」と将来を見据える。

 臨床実習は、江角悠太院長(34)が提案し、高校側に声を掛けて実現した。来年以降も受け入れ校を増やし、継続する方針。江角院長は「実習を通じてどんな医師になりたいか考え、大学六年間をどう過ごすべきかを高校生のうちに考えてもらいたい。患者さんにとっても生徒と話すことは良いことで、病院のスタッフの意識も向上する」と話している。

 (安永陽祐)

朝の回診で患者と笑顔で会話を交わす高校生=志摩市大王町波切の志摩市民病院で
朝の回診で患者と笑顔で会話を交わす高校生=志摩市大王町波切の志摩市民病院で