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【社説】マタハラ対策 だれもが働きやすく

2016/07/20

 妊娠や出産を理由とする職場での嫌がらせ「マタニティーハラスメント」を防ぐため、厚生労働省は企業が実施すべき具体策をまとめた。誰もが働きやすい環境の整備を急ぐべきだ。

 上司に妊娠を報告したら、2週間後に「勤務態度が悪い」という理由で解雇通知を受けた。育児休業明け、保育園の送り迎えができない勤務地への復帰を命じられた-。市民団体「マタハラNet」には深刻な被害が多数寄せられている。

 職場で妊娠や出産、育児休業を理由に退職や降格などを迫られるマタニティーハラスメント(マタハラ)に関し、全国の労働局に寄せられた相談件数は2015年度、約4千300件に上り、過去最多となった。

 こうした不利益な扱いは、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法で禁じられている。最高裁判決を受け、厚労省は昨年、育休の終了などから「原則1年以内に女性が不利益な取り扱いを受けた場合、直ちに違法と判断する」と明確化し、労働局に通知した。今年3月には均等法などが改正され、企業にマタハラ対策を義務付ける条文が加わった。

 これを受け厚労省がまとめた指針案は、対処方針を就業規則などに明記し、加害者を懲戒処分にすることなどを求めている。このほか、周辺の社員に過度なしわ寄せがいかないよう、業務の点検や効率化を行うことも企業側の責務とした。相談窓口を設けるとともに、社員にハラスメントの内容や対処方針を周知することも盛り込んだ。来年1月の改正法施行に合わせて運用を始める。

 指針案には、妊娠や出産したことへの嫌がらせのほか、休業や短時間労働などの制度利用の申し出に対し、上司が解雇や降格などを示唆するなど、マタハラの該当例も示した。

 厚労省が昨年、女性労働者を対象に実施した初の実態調査によると、マタハラを経験したのは21%に上った。「休むなんて迷惑だ」「辞めたら?」など、出産や育児休業を問題視するような発言をされたケースが5割弱を占めた。加害者は直属の上司が3割で最多。また、企業規模が大きいほど経験率が高かったことも分かった。意識改革が必要だろう。

 市民団体の調査によると、マタハラ被害者の多くが、長時間労働が当たり前という職場に属していた。ハラスメントを防止するとともに、長時間労働の是正など、全体の職場環境の改善も急ぎたい。