2016/06/28
中部の企業75%が対策
専門家「個別では限界も」
長く日本型雇用の負の側面だった長時間労働の見直しは、政府が1億総活躍プランで掲げる課題の一つだ。人手不足の中、育児や介護を抱える社員が活躍できる会社に変えようと、中部でも是正に動きだす企業が増えている。ただ、個別の取り組みでは限界との指摘もある。(石井宏樹)
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自動車部品大手のデンソー(愛知県刈谷市)は昨年7月から3カ月間、初めて朝型勤務を導入。出勤時間を従来の午前8時40分から1時間早め、午後8時以降の残業を原則禁止。今年は5~8月の4カ月間に拡大し、本社と基礎研究所(愛知県日進市)の1万3500人が対象で、工場の従業員は含まれない。
朝型勤務を導入した昨年は、午後9時以降に退社した人の割合が11%と、直前3カ月の28%から大幅に減少。加藤明弥労務室長(49)は「空気を変えたいと導入した結果が数字に表れている」と喜ぶ。
朝型勤務を続けるエンジン機器企画室の林克憲室長(51)は「静かな時間帯にゆっくりと考える時間ができた」。会議の時間単位を1時間刻みから45分刻みに短縮し、事務効率のアップも同時に実践。「何となく会社に残るという雰囲気はなくなりつつある」と話す。
中日新聞が中部の主要企業136社に行ったアンケートでは、75%の企業が「長時間労働の是正に取り組んでいる」と回答した。「週1回の早帰り日を実施」(名古屋銀行)や「午後9時以降は事務所を自動消灯」(大同メタル工業)など、あの手この手の対策を施している。
トヨタ自動車は事務職と技術職の約1万3000人を対象に、在宅勤務制度を8月にも大幅に拡充する方針。週1日、2時間出社すれば、それ以外は終日、自宅で仕事をすることができるようになる。育児や介護を抱える職員の活躍への対応に加え、働き方を変えて「生産性アップにつなげる」(幹部)狙いもある。
ただ、デンソーでも国内外の自動車メーカーに対応するため、「長時間労働になることがある」(林室長)。日本総研の山田久チーフエコノミスト(52)は「日本の伝統的な形態では雇用が保障される一方、正社員の職務内容があいまいなため、長時間労働が構造的に起こりやすい」と指摘。「これを変えていくには政府を挙げて、雇用の流動性を高める変革が不可欠。社会全体に長時間労働を是正する意識が広まるにはまだまだ時間がかかる」と話している。
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