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【社会】くらしどうなった/7・10参院選[雇用]求人倍率上昇 人口減が影響

2016/06/22

 安倍晋三首相は「有効求人倍率(四月)は二十四年ぶりの高い水準。四十七の都道府県の全てで一倍を超え、史上初の出来事だ」と、有効求人倍率の上昇をアベノミクスによる景気回復の成果として強調している。

 有効求人倍率は、ハローワークで仕事を求めている人、一人当たりにつき企業の求人がどれだけあるかを示す。景気が良いときは企業が人を欲しがるため倍率は上昇する傾向がある。今年四月時点では一・三四倍と、バブル期だった一九九一年並みの高い水準だ。

 ただ、他の景気指標が景気停滞を示している中での有効求人倍率の上昇は、人口減少や高齢化による人手不足の要因が大きいとの見方は根強い。

 「団塊の世代」が二〇一二年以降、六十五歳を迎え、労働力の中心である生産年齢人口(十五歳から六十四歳)は、一〇年時点から一五年までに約五百万人も減り、約七千六百万人に縮小。今後も減っていく。

 BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は「フルタイムで働いてきた団塊世代が大量に引退し、一人の穴を埋めるために企業は女性のパート勤務や嘱託など複数の短時間労働者でまかなうようになった」と、求人数が押し上げられている構図を指摘する。

 実際、企業の求人もパートタイムの割合が増えており、正社員として就職できた人の数は一五年は百十七万人と一二年に比べ、十八万人減少。就職件数での正社員の割合も一二年一~三月の64・3%から、今年一~三月は61・8%に2・5ポイント下がっている。

 景気が良ければ、企業の売り上げも増えるはず。だが、法人企業統計によると、従業員数(一~三月期)は三年前から約百三十万人減少し、三千百万人になった。売上高もほぼ横ばいだ

 こうした中で、雇用の「質」は全般に悪化。雇用者に占める非正規社員の割合(一六年一~三月期)は37・6%と三年前から1・3ポイント増。不安定な派遣労働者の数も八万人多い百三十二万人に増加している。(中沢佳子)