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【暮らし】キラめく介護職員 写真集でイメージアップ作戦

2016/05/30

 風にそよぐ髪、キラめく瞳。紗(しゃ)がかかった画面にさわやかな笑顔が浮かび上がる-。新進女優のグラビアかと思いきや、現役介護職員を紹介する写真集の一コマ。介護業界では今、きつい勤務に低賃金といった職員イメージを覆し、身近なやりがいのある仕事とPRするソフト戦略が進んでいる。深刻な人材難打開の妙策となるか。

 ◇ ◇ ◇

 「(掲載は)恥ずかしかったけれど、両親や祖父母がすごく喜んでくれて」

 愛知県稲沢市の特別養護老人ホーム「第二大和(だいわ)の里」で働く蒲地佑希乃(かまちゆきの)さん(26)。全国老人福祉施設協議会(全国老施協)作成の写真集「AROUND20」で紹介された介護職員の一人だ。日常の仕事ぶりや、愛犬と過ごす休日の写真とともに「この仕事は天職」とのコメントが掲載されている。

 同県一宮市の特養「アルメゾンみづほ」からは、3人が登場。武田健司さん(30)は、休日などに趣味のバスケットボールを楽しむ写真を主に、飲食店の店長から転職後結婚した様子を紹介。泉景子さん(24)は、一人息子颯(はやて)君(4つ)の育児と仕事を両立させていること、安田みなみさん(30)は妊娠八カ月のころの働く姿を載せ、入所者が孫の誕生のように出産を楽しみにしている情景を伝えた。

 同写真集は、A5判20ページ。介護という職業の“ブランド化”と人材確保を狙い、厚生労働省の補助事業を導入して昨春制作した。対象としたのは、収入や地位より家族や友人との時間を大切に働きたいとの「地元志向型」若者層。当時20代だった愛知県尾張地方の職員六人の充実した公私の生活を視覚的に訴えた。

 巻末には、介護職員の一時金や手当を含む平均月給は28万円弱(13年介護従事者処遇状況等調査)で、約半数が「残業なし」と答えていることなど基本データも添え、地域の学校や飲食店に配布した。

 全国老施協は、都道府県老施協のほか希望施設に同写真集の「ひな型」を配布済み。各施設はグループまたは単独で写真やコメントを差し替えれば、ほぼ印刷代のみで同様の写真集が作成できる仕組みとした。岡山県などで制作が進んでいるほか、今後各地で取り組みが本格化する見込み。

 今春、アルメゾンみづほに就職した浅井聖さん(18)は、高3の時に同写真集を見て介護職への希望を強くした。「趣味を大事にしながら働けるという点がよく分かった」と効果を話す。

 介護職員の写真集では、全国20の社会福祉法人が合同で昨秋刊行した「介護男子スタディーズ」(2160円)もある。写真家高木康行氏が“イケメン”職員20人の日常をグラビア風に紹介。「単なるリクルート本ではなく、介護の仕事を再認識してもらう狙いの本」(事務局)だが、「従来にない面白い試み」と好評で初版1万3000部の完売も近いという。
(白鳥龍也)

「AROUND20」に登場する蒲地佑希乃さん(上段左、中央)、武田健司さん(上段右、下段右)、泉景子さん(下段左、右)、安田みなみさん(下段中央)
「AROUND20」に登場する蒲地佑希乃さん(上段左、中央)、武田健司さん(上段右、下段右)、泉景子さん(下段左、右)、安田みなみさん(下段中央)