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【愛知】報告避ける体質 改善を 医療事故調査制度シンポ

2016/05/30

 医療の安全確保のため昨年10月に始まった医療事故調査制度に関するシンポジウムが28日、名古屋・名駅のウインクあいちであった=写真。4月末現在、全国の医療事故報告数は予想を下回る222件。低調な要因について、医療事故の判断基準のあいまいさ、報告を避ける医療界の体質が指摘され、改善を求める意見が相次いだ。

 制度は、医療施設で予期しない死亡事例が起き、医療事故と判断した場合などに医療事故調査・支援センターに報告。施設内で調べ、その結果もセンターに報告する。課題を検証しようと、医療事故情報センター(名古屋市東区)が開き、関係者ら150人が参加した。

 センターの弁護士は、国が推計した年1300~2000件を下回る現状を紹介。報告基準は「死亡を予期しなかった」で、例えば「症状でなく一般論で死亡の可能性があると患者側に伝えたから予期しなかったわけでない」と都合よく判断するなど、恣意(しい)的に判断できる余地も要因に挙げた。

 意見交換で、加藤良夫弁護士は「医療界に届け出を忌み嫌う風潮がある。淡々と報告する文化が必要」と指摘。被害者遺族として出席した「患者の視点で医療安全を考える連絡協議会」の永井裕之代表は「疑心暗鬼になるのは説明と事実経過が違うとき。そこの検証を」と求める一方、「患者も言うのを控える傾向がある。国民全体で制度を育てる姿勢が必要」と述べた。

 藤田保健衛生大の杉岡篤教授は「届け出に不慣れな面がある。死亡例を一次報告し、その中から必要事例を拾う仕組みができれば報告しやすくなる」と提案。三重大病院の兼児敏浩教授は「最初に報告する事例を選ぶ精度を上げるのが難しい。多くの医師は真面目。温かい目で見守ってほしい」と述べた。 (室木泰彦)