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【社会】過重労働実態 日韓仏が報告

2016/05/21

 過労死や過労自殺を防止しようと、遺族や労働分野の学者や弁護士らでつくる「過労死防止学会」が21日、大阪府吹田市でシンポジウムを開いた。長時間労働が問題視される日韓、労働時間は短くとも労働者の負荷が高まっているフランスの労働現場の実態を各国の専門家が報告した。

 韓国で労働医学を研究する任祥赫(イムサンヒョク)氏は、韓国でも過労死や過労自殺が増えていると説明。「労働規制が弱く、企業の規範意識も低い」と、日本と共通する課題を示し、長時間労働の交代勤務に過労死が多い韓国特有の問題も指摘した。

 週35時間までと厳しい労働時間規制があるフランスの経済学者セバスチャン・ルシュバリエ氏は「労働時間は短いが、企業が生産性を上げようとして労働密度は上がり、労働者のストレスは高まっている」とし、過労自殺が起きていることを明かした。

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◆過労死ライン残業 企業の2割

 長時間労働の是正は、政府が18日にまとめた1億総活躍プランの柱の1つだ。厚生労働省の調査では、「過労死ライン」の月80時間を超えて残業した正社員がいる企業が2割に上った。残業時間が長い人ほど家事や睡眠の時間が短くなる傾向にあり、長時間労働が健康だけでなく、生活面にも影響を及ぼしている実態を裏付けた。

 厚労省は、2年前に施行された過労死防止法に基づき、2015、15年度の過重労働の実態を把握するため、企業約1700社と正規・非正規の労働者約2万人を調査した。

 企業調査では月80時間を超えて残業した正社員がいる企業は22・7%。業種別では、IT産業など情報通信業が44・4%と最も高かった。業務量の多さや不規則な顧客ニーズへの対応が主な理由に挙がった。

 正社員調査からは、平日の家事労働が30分に満たない人の割合は、残業が週1時間以上3時間未満で20・3%だったのに対し、週20時間以上では30・2%に伸びた。1日の睡眠時間を見ると、週20時間以上の残業をしている人では、ほぼ半数が6時間にも満たないと回答した。

 現行では、労働基準法36条に基づき残業の上限時間を労使間で定めた「36(サブロク)協定」を結べば、いくらでも残業は可能。協定について、政府は1億総活躍プランで再検討をうたっているが、一方で労働時間の規制を緩める法改正案を国会に提出しており、実効性は不透明だ。(中沢誠)