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【愛知】現場から/育休中こそキャリアアップ

2016/05/16

人材流出防止 支援企業も

 育児休業を利用し、資格取得などに励む女性が増えている。仕事から離れる時間を子育てに加え「キャリアアップの好機」と捉えて復帰に備える。育休中に今夏の参院選への立候補を決めた2児の母親もいる。企業側も、出産や育児に伴う人材の流出を防ごうと支援態勢を整えつつある。 (奥田哲平)

 ◇ ◇ ◇

 2013年5月、長男を出産した神田たくみさん(34)=日進市=は、切迫早産の危険を乗り越えて生まれた命を喜びつつ、復職までの過ごし方を考えていた。

 育休前は医療機器メーカーの営業担当として各地を飛び回っていた。1カ月後、夫(36)に告げた。「週2日、私にちょうだい」

 出産で休学したMBA(経営学修士号)取得のためのビジネススクールに、再び通い始めた。「ビジネスの世界は日進月歩。勉強し続けないと取り残される」と感じたからだ。

 長男の面倒を夫が見てくれる週末に授業を、平日は子どもが寝ている時や一時託児サービスを利用して勉強した。

 復職を控え、会社からは以前より広い担当エリアの営業を提示されたが、子育てとの両立が難しい。結局、キャリアを評価し、子育ても配慮してくれる外資系のIT企業に14年夏から勤め始めた。MBAも取得した。

 「育休は、次のキャリアを考え、目標を定める期間になった」と振り返る。

 リクルートの調査によると、育休を経験した30~35歳女性の11・5%が「育休中にスキルアップのために勉強した」と回答。同社は、育休中に自分のキャリアを育むことを「育自休暇」と名付けた。

 調査を担当した根岸菜穂子さん(42)は「30代女性は管理職としてマネジメントが求められ、新しい学びを欲している。復職後はスキルで補完しようと考えている」と話し、初産年齢(平均30・6歳)とキャリア転換期の重なりを指摘する。

 全社員の6割を女性が占める三井住友海上火災保険の矢野佳子・能力開発チーム課長は「30歳前後は中堅どころ。やめてしまうのは企業の損失」と語る。

 昨年1月から「ワーキングママ復職支援プログラム」を導入。約130の通信教育の講座を用意し、企業側が全額を負担する。

 ファイナンシャルプランナーなどの講座を選んだ佐々木良子さん(32)=名古屋市中川区=は「育休中のほうが勉強できる時間が多い。人として成長するため、将来を見据えて学んでいる」と話す。

【育児休業】 育児・介護休業法で、原則子どもが1歳になるまで取得が認められている。男女は問わない。育休中は給料が支給されないか、減額され、雇用保険から給付金が支払われる。育休取得率(2014年度)は女性86・6%、男性2・3%。

パソコンでファイナンシャルプランナーの資格講座などを学ぶ育休中の佐々木良子さん=名古屋市中川区で
パソコンでファイナンシャルプランナーの資格講座などを学ぶ育休中の佐々木良子さん=名古屋市中川区で