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【社会】女性の繁忙時勤務増える 輝く働き方リメーク

2016/04/01

資生堂

 4月1日に全面施行された「女性活躍推進法」は、女性がもっと職場で能力を発揮できるよう、企業に働き方の見直しを求めている。目指すのは、育児や介護をしながら「仕事を続けられる」会社から、仕事も充実して「働きがいがある」会社。資生堂(東京)は、短時間勤務をする美容職社員に夕方や休日の勤務を促し、対象者の98%が働き方を変えた。(経済部・坂田奈央)

 ◇ ◇ ◇

 資生堂の改革は昨年末、テレビ番組に「資生堂ショック」と報じられ、注目を集めた。インターネット上では「時短勤務で働く母親に厳しすぎる」「女性が生き生きと働けることが前提。ショックと言うのはおかしい」など賛否が飛び交った。

 改革が始まったのは2014年4月。店頭で化粧品の接客販売をする美容職社員に育児中でも可能な範囲で夕方以降や休日なども勤務するよう促した。本多由紀人事部長(49)は「制度変更ではなく、一人一人への配慮」と狙いを語る。一律の制度に当てはめるのをやめ、育児の状況、周囲の協力体制などの事情を聴いた上で、週1回は遅番、月1回は休日出勤といった柔軟な働き方を認めた。

 愛知県の専門店で働く美容職社員の女性(41)は働き方を見直した一人。それまで長女(9つ)と次女(6つ)の育児で、平日は午後4時45分までの勤務だったが、14年春からは夫に家事育児を頼み、月2回は午後8時まで働く。「申し訳なさも感じていたし、繁忙時に経験を積めないことに葛藤があった」と振り返る。

 社員の約8割を女性が占める資生堂は、1990年代初めに育児休業や育児時短を導入した先駆け。現在、美容職社員約1万人のうち約1200人が短時間勤務に就く。

 時短勤務で出産・育児による退職者がほぼゼロになったが、代わりに夕方以降や休日の勤務をこなす女性社員から「しわ寄せが来ている」などと不満が噴出。会社としても、かき入れ時にプロの美容職が手薄になると販売機会を逃すことになる。

 こうした背景もあり、時短勤務者の働き方を見直す改革をした。重視したのは、美容職の上司にあたる部長職への話し合い。女性社員と一人ずつ向き合う彼らが改革の趣旨を誤って伝えてしまうと、大量退職につながりかねないからだ。

 実際、時短勤務者のほとんどが遅番や休日出勤を選んだ。本多部長は「育児期でも重要な仕事を任され、戦力になってもらうというのが(女性活躍支援の)最終ステージ。育児や介護に限らず多様な事情を抱える社員がいる中、お互いさまの精神がないと会社は成り立たない。言葉を尽くして理解を求めた」と話す。

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◆デンソー
◆ブラザー工業

◆在宅勤務導入 個人の事情に合わせ

 個人の事情に合った働き方を認める動きは、中部の企業にも広がりつつある。デンソー(愛知県刈谷市)とブラザー工業(名古屋市)は、育児や介護を抱える社員でも積極的に仕事に臨めるよう、在宅勤務制度を導入している。

 デンソーは2015年4月から、子の看護や家族の介護などを理由に月5日まで自宅で勤務できるようになり、これまでに約30人が利用した。

 合わせて女性総合職1人1人の今後3~5年の「育成計画」の作成を開始。上司が出産・育児などの人生設計や仕事の希望を聞きながら、本人と計画を立てる。計画は部門全体で共有し、後押しする。16年度から実務職(一般職)にも広げる。

 多様な働き方を後押しするダイバーシティ推進室の北村雅美企画課長(40)は「過剰な配慮をしがちだった上司にも、やりがいのある仕事を与えなければいけないという意識が醸成できる」と狙いを話す。昇進や評価への諦めを防ぐことにもつながるという。

 ブラザー工業は15年10月に在宅勤務を本格導入し、週2回まで自宅で働けるようになった。これまでに約30人が利用し、人事部の担当者は「福利厚生ではなくキャリア支援策」と語る。

 自宅での仕事を可能にしたのがITの活用だ。デンソーは、禁止していた会社以外の場所でインターネットを使って仕事することを認めた上で、在宅勤務を導入。ブラザーでは時差のある海外との会議にも自宅から参加している。

化粧品専門店で接客する資生堂の美容職社員=愛知県内で
化粧品専門店で接客する資生堂の美容職社員=愛知県内で