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【くらし】飲んで ツモる就活 居酒屋、マージャン…

2016/02/08

多くの学生に「興味持って」
中小企業、視野広げる採用活動

 企業の採用担当者と学生が酒を飲みながら触れ合う「就活居酒屋」に、採用担当者の前で腕自慢の学生が対戦する「マージャン採用」。近く本格化する就職活動で、中小企業があの手この手の取り組みを展開している。「通り一遍の採用活動では埋もれてしまう」との危機感が背景にある。

 ◇ ◇ ◇

 「サークルやアルバイトは何をしているの?」、「どんな業界に興味があるの?」。1月中旬の夜、名古屋市内の飲食店で開かれた「就活居酒屋」。ビールで顔を赤らめた採用担当者が学生を質問攻めにした。

 この日集まった学生は、就活を始めたばかりの3年生約40人で、居酒屋といえども、みんな緊張気味。アルコールが入ったせいか「3月に会社説明会があるから来てよ」と、担当者が友達口調で誘う場面も。

 主催したのは、愛知県豊田市の人材派遣会社が設立したNPO法人「働く人の笑顔創り研究所」。大企業を志向することが多い学生と、人手不足に悩む中小企業の出会いの場として2年前に始めた。2017年春卒業予定者の採用では、この日が初めての開催。

 企業側は10社が参加。古着・玩具など買い取り販売「買取(かいとり)王国」(名古屋市)の人事担当、長谷川太一さん(30)は、居酒屋で学生と対面することについて「うちの会社を知らない学生にも、気さくに話す中で興味を持ってもらえるのが利点」と話す。

 大手と違って、事業内容が知られていない中小企業は、説明会でいかに多くに「選考を受けたい」と思わせるかが最初の勝負になる。そのためには「まずは会社説明会に足を運んでもらわなければ」と長谷川さん。

 就活居酒屋の参加費は学生500円。飲み放題とはいえ、がぶ飲みする学生は少ないという。研究所は当初、「就活ではなく、飲食目的の学生が来るのでは」と懸念したが、学生は真面目に企業の話を聞いてくれることがほとんどだ。商社の営業職を志す名古屋市内の大学3年生の女性(21)は「これほど近い距離で社会人と接する機会はない。視野が広がった気がする」。

 マージャン卓を囲んで学生との距離を縮めようという「マージャン採用」も、東京都内などで3年前から開かれている。

 主催する採用支援会社「カケハシ スカイソリューションズ」(東京)は「型通りの採用では、似通った学生しか集まらないのでは」と考えたのが、就活に取り入れた動機。毎回五社前後の採用担当者と、首都圏の大学を中心に40人ほどの学生が参加。企業側は対戦を通じて興味のある学生を見つけ、対戦後の交流会でスカウトする。今年は2月中旬に1回目が計画されている。

 中には、学生とマージャン卓を一緒に囲んで、「どうして参加したの」と意欲を聞き出そうとする採用担当者も。通常の面接とは違った日常の会話が生まれるのがメリットだ。

 現在の就活では、学生がネット上の企業情報を基に簡単にアクセスできるが、もともと興味を持った会社としか出合う場がないデメリットがある。就活居酒屋やマージャン採用は、学生の別の面を見られる可能性がある。

 カケハシ スカイソリューションズは他にも、学生に劇を作ってもらう「即興演劇採用」や、お題をもとにひねりを利かせて答えてもらう「大喜利採用」も企画してきた。広報担当の池田園子さん(39)は「就職情報サイト一辺倒の就活は変わりつつある」と話す。

  (諏訪慧)

就活を控えた学生に仕事内容ややりがいを語る企業の採用担当者(左)=名古屋市内で
就活を控えた学生に仕事内容ややりがいを語る企業の採用担当者(左)=名古屋市内で