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【愛知】「県内ノー残業デー」見回り同行ルポ 県庁無用な仕事ゼロ

2015/11/20

 18日は県や名古屋市などが定めた「県内一斉ノー残業デー」。対象者は官公庁と企業合わせて過去最多の約42万人に上ったとみられるが、旗振り役の県庁ではどの程度、実行されたのか。そんな疑問を胸に、残業をしないよう呼び掛ける担当者と一緒に夜の庁舎を回った。 (長田弘己)

 定時退社の時間である午後5時半の少し前。庁内にアナウンスが響き渡った。

 「県内一斉ノー残業デーです。午後6時半までに退庁してください」

 県内一斉の取り組みは3年前に始まったが、県庁独自では意外と古く、1993年から毎週水曜日をノー残業デーと定めている。仕事にめりはりを付けることと職員の健康を考慮して導入された。

 人事課監察室によると、本庁舎と西庁舎で働く職員数は約3000人。本年度の週1回のノー残業デーの実績では、午後6時半の消灯率は5割で、職員数では平均7%が残業をしていた。徹底までにあと一歩というところだ。

 午後5時半すぎ、1階の廊下では、コートを羽織るなど身支度をして帰途につく職員が目立ち始めた。普段よりも数は多い。足早に歩く男性職員(46)は「今日は特別ですよ。上から、早く帰れとしつこく言われてますから」と苦笑い。

 午後6時半。ここから見回りをスタートさせるのは人事課監察室の職員。3人が本庁舎、西庁舎、屋外とそれぞれの持ち場に分かれた。本庁舎担当の監察室長、沢田陽一さんが最上階の6階から見回りを始め、記者も同行した。

 暗い廊下の先に明かりが見える。河川課だ。

 「人事課監察室です」。沢田さんが部屋に入ると、座っていた2人の職員が緊張した様子で立ち上がった。職員らは河川の決壊など緊急事態に備えていた。この日は雨だったからだ。

 消灯している部屋でも、ドアノブを回して鍵がかかっているかどうかをチェック。沢田さんはこれまでの見回りで、さすがに暗い部屋に隠れてまで仕事をしている人を見たことはないという。

 昼間とは打って変わり、静まり返った庁舎内。1階まで順調に進んだところで、突然、廊下にごま油の香りが漂ってきた。「誰かが、カップ麺か何かを急いで食べて帰ったんですかねえ」といぶかしげな沢田さん。廊下の奥に歩を進めると、明かりがついている部屋があった。

 国勢調査を担当する統計課だった。2人の職員が残って、県民からの問い合わせに関する連絡を待っていた。

 見回りは約30分。監察室の他の2人も戻ってきた。結果は、無用な残業はゼロ。「よかったです」と沢田さん。この日に限れば「合格点」といえるだろう。

ノー残業デーで人けのなくなった県庁内で、誰も残業していないか確認するための見回りをする担当職員
ノー残業デーで人けのなくなった県庁内で、誰も残業していないか確認するための見回りをする担当職員
大部分の部屋の明かりが消えた県庁の本庁舎
大部分の部屋の明かりが消えた県庁の本庁舎