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【社会】妊娠降格に賠償命令 広島高裁 差し戻し審 逆転勝訴

2015/11/18

 広島市西区の福島生協病院に勤務していた女性が妊娠を理由に降格されたことが、男女雇用機会均等法に違反するかが争われ、最高裁が違法と初判断した訴訟の差し戻し控訴審判決が17日、広島高裁であった。野々上友之裁判長は、降格を適法とした一審判決を変更し、原告のほぼ請求通りの約175万円の賠償を病院側に命じた。女性が逆転勝訴した。

 判決などによると、理学療法士の女性は病院のリハビリ部門で2004年から副主任を務めていた。第2子を妊娠した08年、産休と育休を取得する前に軽い業務への転換を求めたところ、副主任を外され、復帰後も管理職でなくなった。

 野々上裁判長は、女性が降格を承諾したことについて「納得して受け入れたとはいえず、自由意思に基づくものではない」と認定。病院側が職場復帰の際、副主任の地位について明確に説明した証拠もないとした。

 病院側は、勤務態度などから女性は管理職として不適格などと主張した。野々上裁判長は「女性が適格を欠くとはいえず、降格の必要性と、同法に反しないと認められる特段の事情はなかった」と退け「女性労働者の母性を尊重し、職業生活充実を確保するべき義務に違反した」と病院側の対応を批判した。

 働く女性が妊娠や出産を機に解雇など職場で不利な扱いを受けるマタニティーハラスメント(マタハラ)をめぐり、最高裁は昨年10月、「妊娠による降格は原則禁止で女性が自由意思で同意しているか、業務上の必要性など特殊事情がなければ違法で無効」とする初判断を示した。降格を適法とした2審判決を「審理が不十分」と破棄、広島高裁に差し戻していた。一審や差し戻し前の控訴審では、ともに女性の請求が退けられていた。

◆社会全体でルールを

【原告女性のコメント】

 とてもうれしく、感動している。今も不当な扱いに耐えている大勢の女性がおり、その声を聞くたび、自分の経験と重なり、涙が出る。子どもを産み育てながら働き続けるため、事業主は男女雇用機会均等法を守ってほしい。社会全体で力を合わせ、マタニティーハラスメントをなくすためのルールを作り上げてほしい。

◆最高裁の基準を指針に

【福島生協病院を運営する広島中央保健生活協同組合のコメント】
 主張が認められず残念。上告するかどうか検討するが、いずれにしても最高裁が示した基準を重要な指針として配慮し、病院運営に当たる。