2015/11/13
仕事多くても「取れない」
2015年9月中間決算を発表した東海地方の運輸、建設業界で、人手不足が業績の足を引っ張るケースが増えている。仕事はたくさんあるのに、運転手や技術者を確保できず、仕事の「取りもれ」が出ており、経営者からは嘆き節も聞こえてくる。
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「仕事を取りこぼしている」と険しい表情を見せるのは、大宝運輸(名古屋市)の小笠原忍社長。個人消費の持ち直しで、食料品や日用雑貨を運ぶ仕事も徐々に回復してきた。だが「車両には余裕があるのに、人手不足で対応できない仕事もある」と売上高は前年から1・7%減った。
徳倉建設(同)の徳倉正晴社長も「民間建築の引き合いは非常に増えたが、人手不足で仕事がやりたくても取れない」と嘆く。16年3月期の受注高は前期比7%減の330億円を見込むが、人手不足の制約がなければ「軽く前年をクリアできた」。特に足りないのは現場監督で、徳倉社長は「メキシコの現場には団塊世代のOBに頼み、行ってもらっている」と明かす。
この建設業界の人手不足のあおりで減収減益になったのは、耐火物製造の美濃窯業(岐阜県瑞浪市)。太田滋俊社長は「職人が足りず、建設現場の工期が長引いている」と話し、人手不足によるセメント需要の減少が、セメント生産に必要な耐火れんがの出荷減少につながったという。
愛知労働局によると、愛知県の9月の有効求人倍率(季節調整値)は1・55倍で、全国を0・31ポイント上回っており、岐阜、三重両県も全国平均より高い。なかでも愛知の職業別で「建設・採掘」(4・72倍)、「輸送・機械運転」(2・50倍)が特に高い。
人材確保で企業側も躍起だ。名鉄運輸(名古屋市)はトラック運転手の採用基準を緩め、普通自動車免許がなくても入社できるようにした。東北地方の高校にも足を運ぶ努力も重ねており、柴田雄己社長は「年に50~60人を新卒採用できるようになった」と語る。トラック輸送のエスライン(岐阜県岐南町)はスマートフォン向けの業務紹介動画をつくり、若い運転手の確保を目指す。
名古屋学院大の江口忍教授は「人手不足は社会的な損失を引き起こし、特に東海地方では深刻度を増している。政府は外国人労働者や移民の受け入れを真剣に検討する必要があるだろう」と指摘する。(石原猛、白石亘、小柳悠志)
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