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【暮らし】「オワハラ」相談窓口活用を 内定先企業が就活終了を強要

2015/07/27

選考経過メモ残す

 大学4年生の就職活動は、面接など企業側の選考が来月1日に始まる。これまでより4カ月遅れになり、就活期間はむしろ長期化。その分、優秀な学生を早めに確保しようと既に内定を出した企業が、学生に就活を終わらせるよう強要する「終われハラスメント(オワハラ)」も増加しているとみられ、対応に苦慮する学生がありそうだ。オワハラに直面したらどう乗り切ればいいのか、専門家に聞いた。 (安食美智子)

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 「内定を出す条件として、就活終了の誓約書へのサインを迫られた」「目の前で、他社への応募を辞退するよう電話することを求められた」-。大学の就職指導窓口には、学生からこんな「オワハラ」被害の相談が寄せられている。

 これに対し、「憲法で職業選択の自由が保障される以上、内定を受けた後も、その後の就活は制限されない」と話すのは、「ブラック企業被害対策弁護団」のメンバーで、労働事件が専門の大久保修一弁護士。

 「誓約書を書いてしまった後、内定を辞退すると損害賠償を求められるのではないか」と不安になる場合もあるかもしれない。しかし、学生が内定辞退を申し出て2週間経過すれば、効力が生まれて企業側が拒否したとしても認められる。従って、損害賠償も請求できないという。

 今後は、8月の大手企業の選考スケジュールに合わせ、内定を出した学生を囲い込むため地方での研修に参加するよう求める、といったケースも想定される。

 「研修に出ない場合、内定を取り消す」と言われたらどうすればいいか。これについても大久保弁護士は「研修は本来、入社後に業務として行われるべきもの。入社前の研修は命令ではなく『任意の合意に基づく』とする判例がある」と説明。研修欠席について、きちんと理由を説明したにもかかわらず、内定を取り消された場合は違法という。

 無理難題を言われたら専門家に相談を。学生には法律事務所のハードルは高いが、若者の労働相談を受けるNPO法人「POSSE」(東京都世田谷区)や「日本労働弁護団」(同千代田区)などの無料相談窓口もある。相談の際に役立つのは、求人情報など、就活で得た資料や選考経過のメモ。内定などに関する連絡もメールや録音など、形に残しておくことが大事だ。

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 「オワハラ」は、景況感が上向き、学生優先の「売り手市場」となってきていることが背景にある。内定は「早いところで4月ごろに出ている」(就活サイト関係者)ため、企業側が学生を囲い込まなくてはならない期間も長引いてより強引さが必要になっているほか、何人に内定を出せば新入社員の必要数を確保できるか予測が難しく、内定乱発につながっているとの指摘もある。

 文部科学省が全国の国公私立の大学・短大82校の就職指導担当者らを対象に五月に実施した調査によると、学生からオワハラの相談を受けたことがあると回答した大学・短大は45%に上った。

【就活スケジュール】 これまでは、12月からの会社説明会を経て、翌年4月以降の選考が行われていた。経団連は、3年時の学業専念などを目的に、説明会解禁を3カ月遅れの3月に、選考開始を4カ月遅い8月にする指針を作り、加盟企業に要請。現在の4年生から実質的な就活期間が後ろに延びた。3年の夏にインターンシップ(就業体験)を経験すると、就活が1年以上に及ぶことになった。

企業のインターンシップ説明会に集まった大学3年生たち。就活は長いと1年以上の長丁場になる=5月26日、東京都渋谷区で
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