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【社会】花形の駅長に就任「女性らしく対応」名鉄中部空港駅

2015/07/14

戦時は登用多く

 愛知県常滑市の名鉄中部国際空港駅に、女性駅長が誕生した。名鉄広報部によると、名鉄の女性駅長は太平洋戦争中にいた記録はあるが、戦後は確認できず極めて珍しい。抜てきされた岩田栄子さん(53)は訪日外国人が急増する中、「入国した外国人の第一印象となる場所。さすが日本と思わせる丁寧な案内をしたい」と意気込む。 (安田功)

 名鉄で1人しか着用していない、金と赤のラインが入った幹部女性用の制帽をかぶる岩田さん。旅行客らで混み合うホームで、名古屋方面への空港特急「ミュースカイ」を見送る姿は堂に入る。だが、電車とは縁のない職場が長かった。

 常滑市出身。1982年の入社から25年間、旅客機の発券業務を担当。2007年、電車利用者から意見などを聞く部署へ異動した。本業の鉄道に関係する業務に就き、基礎知識だけでなく、運賃や所要時間など詳しい情報を求める乗客の気持ちを学んだ。

 駅員への接客指導部署を経て昨年7月、空港駅副駅長に。「男社会でやっていけるか不安だった」。だが持ち前の明るさで同僚と打ち解けた。乗客に声を掛けられるのも、うれしかった。

 人との応対が好きで、選んだ会社。「電車は利用者が身近な感覚なので楽しい」。駅長には今月1日付で就任した。電光掲示板の前に立ち止まる旅行者を案内したり、混雑時には空いている券売機に誘導したりと積極的に現場に立つ。

 1日平均2万2000人以上が利用する中部の玄関口。円安やビザ緩和の影響で、外国人観光客は目に見えて増えている。外国人の案内には翻訳ソフト入りのタブレットなどを駆使するが、今後は部下らと一緒に、英語や中国語の単語を学ぶ勉強会も計画していく。

 「地理に不慣れな人が多い駅。女性らしい柔らかくこまやかな対応で、誰もが安心して電車に乗れるようにしたい」。中部地方の顔の1人として、おもてなしの心を大切にするつもりだ。

 名鉄広報部によると、44年3月に名古屋本線の東枇杷島駅(名古屋市)で女性駅長が初めて誕生。戦況が悪化して男性が戦地に取られ、女性登用が目立ったという。その後は、戦後の混乱期や伊勢湾台風による資料の散逸などで不明。今年3月末現在で、鉄道現場で働く3900人のうち女性は車掌など83人。

 JR東海では、2009年に尾張一宮駅(愛知県一宮市)で初の女性駅長が就任した。

名鉄中部国際空港駅長に就任した岩田栄子さん=愛知県常滑市で
名鉄中部国際空港駅長に就任した岩田栄子さん=愛知県常滑市で