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【くらし】働く/管理職への教育に重点 男性の育休取得低迷

2015/06/29

「育児は女性」根深い固定観念

 低迷する男性の育児休業取得率を上げようと、管理職教育に力を入れる企業や自治体が出てきた。取得を妨げているのが、「育児は女性の仕事」などのイメージにとらわれている管理職である場合が多いためだ。仕事と育児の両立を支援する上司「イクボス」育成に力を入れたり、管理職の賞与査定で取得を評価したりして、パタニティーハラスメント(男性の育休取得などを邪魔する言葉や行動)の防止を目指す。 (安食美智子)

 ◇ ◇ ◇

 東京都西東京市の日本生命社員吉崎達哉さん(31)は、次女の華央(かお)ちゃん(9カ月)が生まれた時、1週間ほどの育休を取った。

 予定日より1カ月早い出産で、未熟児だったため、妻の奈穂さん(30)は毎日、次女のために母乳を病院に届けた。吉崎さんは長女の莉央ちゃん(3つ)にご飯を食べさせたり、一緒に風呂に入ったりしてスキンシップを心がけた。「妻が1人でいられる時間をできるだけつくり、長女が寂しく感じないように工夫しました」。プールや公園にもよく連れ出し、「本当に助かりました」と奈穂さん。

 吉崎さんの育休取得は、長女の時に次いで2度目。「自分も部下を持つ身になったら、積極的に育休を取らせたい」と話す。

 同社は、男性の育休取得率(配偶者が出産した社員のうち育休を取得した社員の割合)100%の目標を、2013~14年度に2年連続で達成。2年間で597人の男性が育休を取った。同社には通常の有給休暇とは別に、育休の7日間が有給となる制度があり、実際の取得者の8割が7日間だった。

 同社「輝き推進室」の浜口知実室長は「取得者本人の効率性が高まった上、コミュニケーションが深まった」と手応えを示すが、「管理職の対応にはまだ温度差がある」という。本年度から、仕事と育児の両立支援に取り組むことを、課長級以上の管理職に宣言させている。

 政府は、3月に発表した少子化社会対策大綱で、男性の育休取得率を5年後に13%に引き上げる目標を打ち出した。だが、厚生労働省の雇用均等基本調査(2014年度速報版)では、男性の育休取得率は2・3%で、目標には程遠い。

 そんな中、イクボス養成に取り組むNPO法人「ファザーリング・ジャパン」(東京都千代田区)は昨年末、「イクボス企業同盟」を発足させ、日本生命など二十四社が加盟している。広島県などの自治体でもイクボス研修を実施しており、北九州市は、管理職が部下の育休取得の目標を立て、その達成度をボーナス査定に反映させている。

 ファザーリング・ジャパンの安藤哲也代表(52)は「管理職世代には、育児は女性の役割という固定観念がある。両立支援を査定に反映させると明確に打ち出せば、管理職の意識を高められる」と指摘する。

 パタハラ防止も重要だ。連合調査(2014年)では、子どものいる働く男性の11・6%が上司に育休を認められなかったり、「育児は母親の役割」と言われたりするパタハラを経験。

 パタハラ防止の企業向け研修などをするNPO法人「全日本育児普及協会」(横浜市)が、育休や時短勤務などの取得男性約百人を対象にした調査でも、「周りの事を考えろと上司から怒られた」「おまえは女かと言われ心が折れた」などの声が届く。

 佐藤士文(しもん)代表(38)は「育休体験は人生観が変わる。どの父親もその機会を脅かされないように、働き方改革を広げたい」と話す。