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【くらし】天職ですか/自動車保険査定のプロ・門脇保広さん

2015/06/22

 全国で毎日、平均1600件ほどの自動車による交通事故が起き、修理代などが自動車保険の保険金から払われている。損害保険業界では、「アジャスター」と呼ばれる専門職が物損事故の査定をする。共栄火災海上保険(本社東京都港区)の門脇保広さんは28年目のベテラン。これまでに1万3000件の査定にかかわった。

 保険加入者から事故の報告を受けると、アジャスターの出番だ。車の損傷程度などから、損害額を計算して保険金額を提示。事故の相手方との示談交渉も行う。「修理工場との交渉が最も大変です」と門脇さん。

 専門知識が必要なので、日本損害保険協会が試験や研修を実施してアジャスターを登録する。登録者は現在、全国で約8200人。もともと車に興味がある人や車の知識が豊富な人が多いという。

 門脇さんも、幼稚園のころから車の絵を描いたほどの車好き。自動車整備などを学ぶ短大でアジャスターという仕事があるのを知り、23歳で共栄火災海上の子会社だった共栄火災損害調査に入社した。

 今も覚えているのは、20年ほど前の事故。現場が山間部で、運転者自身にも正確な事故現場が分からなかった。門脇さんは曲がりくねった細い道を2キロほど歩き、傷ついたガードレールと車の破片が落ちているのを見つけた。「やったーと跳び上がるほどうれしかったですね」。当時はアジャスターの格付けは4ランクあり、入社5年後に最上位に上がった。

 損保業界が作った調査会社「自研センター」に出向し、保険金詐取が疑われる案件も研究した。昨年4月からは、中部損害サービス部名古屋自動車損害サービス課で、アジャスター社員を統括する技術担当課長を務める。

 アジャスター経験の少ない社員を指導するのも、今の重要な職務。査定をめぐっては、関係先と意見が合わずに厳しい交渉になることもあるが、「修理工場や事故の相手方への上手なアプローチ方法なども教えています」。

(文・写真、白井康彦)

自動車事故の状況を見ながら、査定を確認する門脇保広さん=名古屋市中区の共栄火災海上保険中部損害サービス部で
自動車事故の状況を見ながら、査定を確認する門脇保広さん=名古屋市中区の共栄火災海上保険中部損害サービス部で