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【暮らし】ブラック企業 バイトに賠償請求も 泣き寝入りしないで

2015/05/11

弁護士や労組 被害学生支援

 学業と両立できない理不尽な労働を学生に強いるブラックバイト問題で、会社側が根拠のない損害賠償請求を学生に突きつける不当な行為が目立っている。弱い立場の学生に泣き寝入りはさせないと、弁護士が無料相談を行ったり、かつて被害に遭った学生がつくった労組が手助けしたりするなど、支援の動きも広がってきた。 (山本真嗣)

 ◇ ◇ ◇

 「アルバイトの契約期間中であり、辞めることで(受け持っている)顧客の信用を失う。数10万円の損害賠償を請求することもある」。昨年12月、アルバイトで家庭教師をしていた中部地方の男子大学1年生(19)は、アルバイトを統括していた家庭教師派遣会社の社員からこう告げられ、耳を疑った。

 学生は6月から週3回、中学生を教え始めた。契約は10カ月以上。しかし「教え子の成績を上げなければ」という重圧などで心身を病み、大学も通えなくなったため、「辞めたい」と申し出たところ、会社は拒否。心療内科の診断書を会社に提出したが、「この程度では病気とはいえない」と突き返された。

 困った末、「家庭教師のアルバイトを辞めさせてもらえない」と、ブラックバイト対策弁護団あいち(名古屋市)に相談。堀江哲史弁護士(36)から「契約期間内であっても、やむを得ない理由があれば辞められる。損害賠償を払う必要もない」と助言された。そこで、診断書を受け入れない理由を文書で求めたところ、会社は損害賠償請求を撤回。アルバイトを辞めることができた。

 ブラック企業がアルバイトを辞めようとする学生に損害賠償を請求する事例が、全国で相次いでいる。対策弁護団あいちには、昨年7月の結成以降、30件以上の相談が寄せられているが、そのうち3分の1ほどが損害賠償を請求されていた。

 被害をできるだけ減らすため、会社との交渉で直接弁護士が対応する場合があるほか、必要ならば労働基準監督署への通告や労働審判などの法的手段も検討している。事務局の久野由詠(よしえ)さん(30)は「アルバイトも法律で守られている。泣き寝入りせず、行動してほしい」と話す。

 一方、東京などの大学生らが連携して結成した労働組合「ブラックバイトユニオン」は、実際に被害を受けた学生と一緒に企業側と団体交渉を行っている。残業代や深夜手当の不払いなど違法な点を指摘し、未払い賃金などを請求。今年2月には、都内の飲食店で働いていた短大生2人への未払い賃金全額の5万円を勝ち取った。

 弁護士やNPOなどでつくる「ブラック企業対策プロジェクト」が、全国27大学のアルバイト経験のある学生約3600人に行った調査では、67%が「不当な扱いを受けた」と回答。具体的には「労働条件を書面で渡されなかった」「残業代の不払い」=グラフ=などで、それらの学生の半数は「何も(対応)しなかった」と答え、泣き寝入りしていた。

 調査した大内裕和・中京大教授(47)は「学生は不当な働かされ方に気付かず、会社から足元をみられる。会社の言うことをうのみにせず、困ったら専門家に相談してほしい」と話す。

 相談は、ブラックバイト対策弁護団あいち(名古屋第一法律事務所)=電052(211)2236、ブラックバイトユニオン=電(6804)7245=へ。