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【経済】女性就労の「壁」に「放課後子供教室」との一体型推進

2014/12/05

依然深刻な施設不足

 厚生労働省が先月発表した放課後児童クラブ(学童保育)の実施状況によると、クラブ数、登録児童数ともに過去最多を記録。待機児童は1万人に迫り、利用を希望する児童数に対して、施設整備が追いつかない状況は、ここ10年大きく変わっていない=グラフ。

 「児童を育てながら働くためのインフラは絶対的に不足している」と指摘するのは、東京都内を中心に学童保育の開設を支援する、NPO法人「放課後NPOアフタースクール」代表理事の平岩国泰さん。同じ待機児童でも保育所に比べ、あまり注目されてこなかったのは、「小学生は1人で過ごせる」という社会の認識が根強いからだ。

 子どもが小学生になると短時間勤務制度が使えなくなる会社は多い。都市部では地域の人間関係が希薄になり、平日に子どもが遊ぶ姿を見かけない公園も。「増税に頼らず優先的に取り組んでほしい。大人には、地域社会で育てる視点が必要」と平岩さんは危機感を募らせる。

 政府が6月にまとめた新成長戦略では、小学校入学後に預け先を確保できず、女性が仕事を辞めざるを得ない「小1の壁」という言葉が使われた。女性の就労支援の観点から、放課後の子どもの居場所の必要性がようやく知られるように。今後5年間で30万人分の受け入れ枠を拡大するため、7月に策定した「放課後子ども総合プラン」で、学校の空き教室活用により、新規開設の放課後児童クラブの八割は、学校内で実施する方向性も示された。

 具体的には学校施設を活用する文部科学省の事業「放課後子供教室」と一体的、または連携して進める=イラスト。約2万カ所ある全小学校区のうち、一万カ所以上を一体型で実施する目標も掲げた。同教室は全児童を対象とし、地域住民らの協力を得ながら、宿題指導などの学習支援や工作、実験教室などの多様なプログラムを提供している。

 ただ、同教室が「学習・体験活動の場」であるのに対し、学童保育は「生活の場」の意味合いが強い。

 放課後の教育支援を話し合う文科省の中央教育審議会委員も務めた、NPO法人スクール・アドバイス・ネットワークの生重幸恵(いくしげゆきえ)さんは「子どもを置いておけばいいという話ではない。指導員は子どもに対応する専門性が必要」と強調する。

 我慢できない、うまく表現できず手を上げてしまうなど、対応が難しい子どもと接するには1、2回の研修では不十分。見守り方や声かけのタイミングを体系的に学習しておけば、子どもとの信頼関係の構築につながる。

 学童保育の指導員資格は国の基準が定められ、来年度から都道府県による資格認定研修が始まるなど、前進もある。

 一方、子どもが安心して生活するには、指導員の手厚い配置基準が必要だ。全国学童保育連絡協議会は「専任の常勤指導員を常時、複数配置する」などの充実を求めている。