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【暮らし】女性活躍ってなんですか/職場や地域、家庭で孤立も

2014/11/24

職場や地域、家庭で孤立も 

 岐阜県高山市の看護師の女性(62)は、認知症の義母(87)を介護して4年になる。夫は5人きょうだいの2番目で長男。義姉夫婦に義母を託した時期もあったが、認知症が進んで負担が重くなり、結局、女性が引き受けた。介護施設のショートステイを組み合わせ、仕事との両立をこなす。


 勤続32年の職場は慢性的な看護師不足。同僚に迷惑はかけられないと介護を理由に休んだことは一度もない。義母の状態が「要介護5」まで進んでも、介護休業の取得をためらう。

 最近になってようやく、両立に自分なりのペースができたと思えるように。視力は落ち、疲れもたまる一方だが、「3人の子育てを助けてもらった恩返し」と言い聞かせている。

      ◇

 「介護は女性の仕事という職場や地域、家族からの圧力や空気がある」。労働団体「均等待遇アクション21」(東京)のメンバー、酒井和子さん(67)は指摘する。5月から、介護経験のある関東や中部地方の働く女性たちに会い、介護を理由にした転職や退職などの就業継続について聞き取り調査を続けている。冒頭の女性もその1人だ。

 正社員であっても、介護休業の取得や時短勤務など柔軟な働き方を選べない。女性の半数を占める非正規雇用となると、そもそも両立支援がなく、貧困化や孤立化の実態も見えた。来年3月には100人の実態を報告書にまとめ、介護者の立場からの両立支援制度や、職場風土の改善に向け、提言や要望につなげていく。

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 2013年の国民生活基礎調査によれば、同居の主な介護者の男女比は、女性が約69%。9年前の約75%から減ったが、女性が担う状況は変わらない。

 愛知県春日井市で今月5日、「介護とジェンダー」をテーマに開かれた講演会。全国でも数少ない、認知症の人などの家族介護者を支援するNPO法人「てとりん」の代表理事、岩月万季代さんが呼び掛けた。

 「女性が社会に出るためには家族みんなで介護を分担する。仕事を理由にしがちな男性も巻き込む。女性が1人でしない、女性1人にさせないことです」

 岩月さんも両親の介護経験があり、夫に仕事を1時間早く切り上げてもらうことで、仕事を辞めずに済んだ。家族に介護が必要になった場合の対応では、一緒に介護をしてくれる家族や親戚など協力者を洗い出す、情報を共有する雰囲気をつくる、できることできないことを明確にするなど、家族を上手に巻き込むポイントを紹介した。

 ただ、ジレンマもある。介護者を支援する中で「女性が介護をしながら、外に働きに出られる状況ではない」と感じることは多い。介護者の状況を客観的に評価できる手法の開発や、介護者支援の法整備に向け、奔走している。

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 介護をしながら働く人は約290万人。07~12年に介護や看護のために離職した計48万7000人のうち、女性は8割を占める。女性が主に介護を担う現状で、施設介護から在宅介護を促す国の介護保険制度は、女性の負担が増すばかりとの声もある。両立しながら無理なく働き続けるために必要な支援を考えていく。

(福沢英里)

「介護は女性一人にさせない」と講演で訴える岩月万季代さん=愛知県春日井市で
「介護は女性一人にさせない」と講演で訴える岩月万季代さん=愛知県春日井市で