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【暮らし】女性活躍ってなんですか/就労がすべてじゃない

2014/10/20

 安倍政権は「女性の活躍」を経済成長戦略の柱に据え、関連法案を臨時国会に提出した。戦前は出産を奨励され、戦後は企業戦士の夫を支えて家庭を守り、そして今度は労働力として期待されて…。女性の“活躍”って何なのか。国に決めつけられる前に、自分にとっての「生き方」を大切にしたい。そんな女性たちの声を紹介する。

 「税金を納めてない自分はどこか肩身が狭かった」-。東京都練馬区の樋熊(ひぐま)麻子さん(41)は、主婦であることを恥じていたのは違うと今では思う。会社員の夫と3人の子と5人暮らし。大学卒業後、企業で販売促進の仕事を夜遅くまでこなしていたが、14年前に第1子出産を機に退職。夫の帰宅は遅く、必然的な決断だった。

 再就職を考えなかったわけではない。3人目を授かる前、少しでも家計を助けたいと保育所の空きを調べたが、フルタイムの正社員でも利用できない現状を知った。無認可保育所も探したが、6万円以上する保育料に「私が働くのは今ではないんだ」と納得させた。

 その後、3人目を妊娠。長男が十歳になり、学校で褒められることが増えるなど、その成長ぶりに、まさに子育ては人材育成だと手応えを感じた。「家庭こそ社会の第1線、私は社会から降りたわけではない」と思えば吹っ切れた。

 母親の役割は幅広い。家計をやりくりし、家族の健康と暮らしを守る。PTA役員や地域の付き合いを通し、地域の子の成長にも関わる。人から求められ、人の役に立つことを仕事と言うのなら「社会の根っこを作る『お母さん仕事』に転職したと考えればいい」。

 今夏、そんな思いをまとめた「もっと楽しく、少しだけていねいな お母さん仕事」(ワニブックス)を出版した。「女性の活躍って多様なはず。専業主婦も家庭や地域という社会で日々活躍している」

      ◇

 国の政策には主婦の再就職や起業への支援もあり、再就職の支援機関は各地に開設され始めている。

 「もっと主婦は自分に自信を持っていい」と言うのは、今春に再就職した名古屋市のパート中村真規子さん(40)。再就職の面接で出た言葉は、「13年もブランクがあってすみません」だった。

 2児の母親として、家族に時間とエネルギーを注いできた。ただ、家庭の仕事はやって当たり前。知らないうちにマイナス思考になっていた。面接では出張ができるか、子どもの預け先、家事育児の家族との協力体制などを聞かれた。最初はあれもこれもできないと、減点法でしか考えられなかった。自分を見つめ直すうちに「結婚前より柔軟に物事に対応できる」ことに気付き、前向きに考えられるようになった。

 しかし、多くの母親は子どもの習い事の送迎や学校行事への参加など、家族の生活とのバランスを考えながら、働き方を選ばざるを得ない。結果、フルタイムや残業のある仕事は難しい。「短時間でも評価され、柔軟に働けるようになれば、もっと活躍の場も広がる」と感じている

 女性政策の法案内容を検討する厚生労働省労働政策審議会雇用均等分科会の委員で、連合副事務局長の南部美智代さんは「女性が自分の望む道を自分で選択でき、ごく普通の生活を送ることができる社会の整備が重要。子育てや介護で働けない女性への支援などを確実に進めていく必要がある」と話す。

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 27日はインターネットで読者の意見を聞く「中日ボイス」で集めた、女性活躍政策に対する女性の意見を取り上げます。

(福沢英里)

コーヒーをいれながら、「家庭や子ども、社会と真面目に向き合うのがお母さん仕事」と話す樋熊麻子さん=東京都練馬区で
コーヒーをいれながら、「家庭や子ども、社会と真面目に向き合うのがお母さん仕事」と話す樋熊麻子さん=東京都練馬区で