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【地域経済】女性活躍法案 中部で起業の女性社長に聞く

2014/10/18

 政府は17日、女性の活躍を推進する法案を閣議決定した。ただ中部地方では女性の社長の割合が、全国でも最低レベルにとどまるのが現状だ。そこで自ら会社を起こした中部地方の女性社長2人に、起業を志した理由や、女性が活躍するための課題などを聞いた。

 ◇ ◇ ◇

◆働く目的明確にして
◆アライド
◆栗田康代さん(37)

 コンサルティング会社「Allied(アライド)」(岐阜県大垣市)を今年設立した原点は、飲食店を営んでいた両親の姿です。仕事で社会とつながる親の姿を見て、働く意義を学びました。

 短大を卒業後、岐阜県内の商社に就職し、労務や人事を担当しました。その会社では女性は寿退社が普通でしたが、結婚した時も、長女を妊娠した時も、仕事を続けようと思いました。産休・育休取得の第1号。同僚は驚いていましたね。

 「結婚してから、働きが悪くなった」と言われるのが嫌で。誰より早く出社し、仕事に打ち込みました。その後、後輩も産休・育休を取るようになって。「前例を作ってくれたので出産後も働ける環境になった」と感謝されました。

 入社から9年がたって、労務関係の仕事をもっと深く知ろうと、社会保険労務士の事務所に転職しました。さまざまな業種の社長さんと会い、経営の悩みを聞きました。「自分はなぜ働くのか」「何を実現したいのか」。会社のトップにいながら、根本で迷いがある人が多くいました。

 私に各業界の専門知識はありませんが、相談に乗ることで、経営のビジョンづくりをお手伝いできると気付きました。人は成長する過程で、自分のあるべき姿を思い描いています。それを明確にすれば、会社をどのように経営すべきか、おのずと定まります。女性がキャリアビジョン(仕事の方針)をつくるのも同じ。まず働く目的や目標を明確にする必要があります。

 女性が家庭を優先するあまり、仕事を辞めるのは惜しい。中部地方は女性社長の割合が低いと聞きますが、実際、起業した女性に会ったことは私自身、数えるほど。女性が働く環境を支援する仕組みは不可欠です。(聞き手・小柳悠志)

    ◇

◆子どもとの時間課題
◆スノーム
◆白石みどりさん(37)

 企業や病院で働く従業員のメンタルヘルスのケアを手掛ける「スノーム」(名古屋市)を昨年秋に起業しました。それまで17年間、看護師として働き、救急救命など急性期医療と終末期医療の両方を経験しました。亡くなる方が多い部署で、精神的なストレスが大きく、医療従事者にも心のケアが必要と感じていました。でも、精神的なサポートをする仕組みがなかった。なので自分でやろうと思い、起業を決めました。

 34歳で大学に入学し、心理学や経営を学び、事業計画を練りました。さまざまなベンチャーグランプリで入賞し、東京都の支援を受けて起業しました。

 会社設立の手続きや、スタッフの雇用管理など初めてのことばかり。営業も初めてですが、愛知県内の企業や福祉施設など数件の契約がとれました。

 女性経営者だからといって、特別視されたことはありません。「男みたいに頑張ろう」と思ったこともないですね。ただ経営者としてはプレッシャーだらけ。従業員の2倍、頑張らないといけないと思います。

 3人の子どもと会社役員の夫が応援してくれています。家事や育児は半分ずつ分担していますが、子どもとの時間をどう確保するかが課題。子どものために時間を割くのを是認する企業風土があるといいですね。

 中部は豊かな地域で、共働きをしなくても生活に困らない家庭が多い。もともと企業に女性が少ないから、女性トップを輩出しにくいのではないでしょうか。保守的な風土も影響しているのかもしれません。

 女性が働くモチベーションを上げるためには、企業側の努力が必要。子育てや介護に対する支援など、女性が働く上でのデメリットをカバーする仕組みをつくることが大事と思います。(聞き手・今村節)

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◆先輩経営者の助言 力に

 日本政策投資銀行の栗原美津枝・女性起業サポートセンター長の話 女性が起業するビジネスは、地域の課題を解決しようとするものが多い。子育てや教育を通じて、地域との接点が多いからでしょう。また地域にある資源をうまく組み合わせ、新たな価値を生み出すことにたけています。

 地域の課題に取り組む女性起業家を応援することは、政府が目指す「地方創生」にもつながります。ただ女性は経験やネットワークが少なく、助言役となる先輩経営者らの役割がより重要です。

 中部地方には企業がたくさんあるので、共同開発などで女性起業家と連携を深めてほしいですね。