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【社会】売り手市場の就活 あす内定式

2014/09/30

辞退続出 引き留め懸命

 複数の企業から内定を得た学生が内定を辞退するケースが続出し、企業の採用担当者が頭を悩ませている。景気回復による業績改善を受け、会社間の採用競争は激化。数年前までの就職氷河期から一転して、学生の「売り手市場」となった。各社は辞退者を出さないための対策セミナーに参加するなど、内定者の引き留めに力を入れている。10月1日には多くの企業が内定式を開く。

 ◇ ◇ ◇

 金属を取り扱う名古屋市の専門商社では、昨年の辞退者は1人だけだったが、今年は内定者7人のうち5人が辞退。人事担当者は「内定後のフォローアップが足りていなかった」と反省する。

 例年20人を採用している同市内のオフィス機器メーカーも、昨年2人だった辞退者が4倍の8人と一挙に増えた。

 両社から相談を受けた就職情報会社の担当者は「一部の大手企業が大幅に採用を増やしているあおりを受けている」と説明。内定者向けの研修や社員との懇親会を定期的に開くようアドバイスしてきた。

 同社によると、中部圏では、自動車など好調な企業が多く、学生の就職状況は大幅な改善傾向にある。就職情報サイトを運営するリクルートキャリアによると8月1日時点の中部圏の学生の内定率は75・4%と、前年同期比で2・3ポイント上昇。複数の企業から内定を受けた学生の割合は55・2%で11・2ポイント増えた。内定辞退率は57・6%と14・6ポイント上昇した。

 2社から内定を得て自動車メーカーへの就職を決めた名古屋大4年の男子学生(22)は、断った会社には最初から別の会社が第1志望と伝えた上で内定を得たといい、「本当に『売り手市場』なのだということを実感した」と話す。

 南山大で学生の就活支援などを担当する就職委員会の石垣智徳委員長は「経済情勢をみると、内定辞退が相次ぐ状況は今後もしばらく続くのではないか」とみている。

 一昨年から「内定辞退防止対策セミナー」を開いている就職情報会社マイナビの研修企画統括部開発課の薄(うすき)良子課長は「内定辞退が増える背景には、景気回復以外にも少子化による学生数の減少といった理由がある。内定者の確保は今後、企業にはこれまで以上に重要な課題となるだろう」と話している。