2014/09/29
好調も見えない成果
中小企業の経営改善や新商品開発、新規創業の無料相談に応じる岡崎ビジネスサポートセンター(OKa-Biz=オカビズ)が設立1周年を迎える。週四日開設する窓口には岡崎市や豊田市から1日平均7人が訪れ、人気がある相談員の予約は1カ月待ち。順調なスタートを切ったが、今後は売り上げ増など具体的な結果を求める声も高まりそうだ。 (帯田祥尚、佐藤浩太郎)
中心市街地にある岡崎市中央図書館の施設の一角。通りに面した大きな窓から明るい光が注ぐ。30畳ほどのスペースにテーブルが4脚。中小企業経営者や商店主が相談員と向かい合って座り、悩みを打ち明ける。
1回の相談は1時間。相談員はまず、その企業の長所は何かを見極め、課題解決に向けたアドバイスをする。解決までには複数回の面談を重ねるのが一般的で、相談者の7割がリピーターだ。
■課題が明確に
「無料だから気軽に相談できた」。豊田市の自動車部品会社、三光ライト工業所の大岩和成社長(46)は、プラスチックの加工技術を生かして開発した植木鉢の販路を開拓したいと、昨年10月から今年7月まで計5回、オカビズに通った。
為替や原油価格に左右される本業を補おうと考え、ホームセンターや農家に卸したが、思うように売れなかった。どんな人に買ってもらえるのか。「相談するごとに課題が一つ一つ明確になっていった」と振り返る。
その結果、客層を20~30代の女性に設定し、インテリア雑貨としてデザインを見直すと、月の売り上げが5倍に伸びた。情報発信のヒントが得られたのも大きく、若者向けにホームページのレイアウトを変更して販路開拓につなげた。
■相談相手がない
岡崎市内だけで1万4000社ある企業のうち、中小企業は98・6%を占める。そうした企業を対象にした無料相談所は岡崎商工会議所内にもあり、2012年度に2800件以上の相談があった。
しかし同年、市が実施したアンケートでは回答した118社のうち3割が「相談する相手はいない」と回答。既存の体制では拾いきれない経営者のニーズが浮き彫りになった。
「それまで相談する場がなかった人たちが自社の強みを再認識し、販売や営業戦略を話し合う場ができた」。オカビズの秋元祥治センター長(34)は、設立の意義を語る。
オカビズが重視してきたのは、相談件数の伸びとリピート率、口コミでの訪問者数の増加だ。8月末までに窓口を訪れた相談者は延べ1250人と当初想定の2倍を超え、関係者は「上々の滑り出し」と口をそろえる。
■異業種連携も
ただ、新たに創業した会社が13社あることは分かっているが、相談者全体の売り上げがどれだけ伸びたかを測る指標はなく、評価は難しい。岡崎市の担当者は「追跡調査するのにも相応の費用がかかる」と1年で結果を求めることには慎重だ。
2年目以降も相談者の裾野拡大に重点を置く姿勢は変わらない。月に1、2度、各界の専門家を招いて開く無料のビジネス講演会を続け、オカビズの存在をアピールしていく。
相談者の業種は小売りやサービス、製造が目立つが、今後は農業や福祉分野との交流を目指す。秋元センター長は「オカビズを核にいろんなつながりができれば、異業種連携の可能性も広がる」と、さらなる相談体制の充実に力を注ぐ。
【岡崎ビジネスサポートセンター】 岡崎市と岡崎商工会議所が共同運営し、中小企業の経営相談に応じる支援機関として2013年月に設立。静岡県富士市の「富士市産業支援センター(f-Biz=エフビズ)」を参考に、大学教員や中小企業診断士、情報技術(IT)、デザインの専門家人が日替わりで相談員を務める。市内の金融機関と提携し、融資に向けた実践的なアドバイスも聞ける。相談には事前の電話予約が必要。
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