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【暮らし】<もう一度働きたい>(下) カウンセリング

2014/09/12

 働く理由や、どう働くかを明確に-。各地の機関では、再就職を目指す女性たちを後押ししようと相談業務に力を注いでいる。名古屋市中村区にある「あいち子育て女性再就職サポートセンター」では先月、再就職を考える女性による「ママたちの井戸端会議」が開かれた。

 ある女性は「周囲のママ友は復帰前提の育児休業中の正社員か、妊娠を機に退職して戻るところがない人か、どちらか。相談相手がいない」と切り出した。別の女性は「子どもが小学校3、4年生になるとパートに出る人が多く、『働いてないの?』と聞かれ、焦りを感じる」と悩みを打ち明けた。子どもの学費などを考えると、いずれは働きたいが、夫に家事育児を頼めそうにない。「再就職を考える女性がどんな悩みを抱えているのか、聞いてみたかった」と話した。

 進行役を務めたキャリアコンサルタントの倉橋満里子さんは「再就職を考えるとき、ブランクや経験不足を否定的に捉えず、自分がどう働きたいかを大切にしてほしい」と強調する。そして夫や家族の理解と協力を得るため、働く目的を明確にする。生活費のため、経済的自立、誰かの役に立ちたいなど、自分にとっての「働く意義」を考え、そのために「どう働くか」を具体化するようアドバイスした。

      ◇

 「女性が元気に働き続けられる愛知」を掲げる愛知県は、5月にサポートセンターを開設。結婚や出産などを理由に、離職した女性向けの個別相談を重視している。相談に来た人に井戸端会議のような交流会への参加を促し、多様な視点から再就職を考えてもらう仕組みも整えた。

 センターで相談を受け持つ、キャリアコンサルティング技能士の渡辺洋子さん(47)は、「女性活躍の掛け声に押され、何となく『働かなきゃ』と焦っている女性が目立つ」と危ぶむ。夫の転勤で仕事を辞めたが、慣れない土地での子育てや仕事を辞めた孤立感などから、悩みが深くなる女性もいるという。

 井戸端会議に参加した愛知県刈谷市の女性(29)は、立場や考え方の異なる女性の話を聞くうち、「何が何でも働きたい」という気持ちに変化が訪れた。「働くことで社会とつながりたい」と、9カ月の子を連れて職探しに出歩いていたが、つながり方は仕事以外にもあると気付いたからだ。

 そもそも夫は働くことに消極的だった。「まずは働かなくてもいい環境にいることを感謝すべきだった」と女性。帰宅後に夫と話し、今は家事育児にじっくり取り組み、自分の気持ちを整理してから就職活動に臨むことにした。

 一方、再就職はしたものの、子どもの病気で欠勤が続き、雇い止めされた名古屋市の女性(39)は、自分の進むべき方向性が見えてきた。「キャリアのために通信制の大学でも学んでいる。正社員が目標だが、まずは非正規雇用でもいい。いずれは独立も考えたい」。交流会などで複数の意見に触れ、気持ちに余裕も生まれてきた。「考えがぶれそうになったら、妻であり、母であるという職業人以外の役割があることに立ち返ればいい」と語った。

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 東京都内では、千代田区の東京しごとセンター内に7月、女性の再就職支援に絞った「女性しごと応援テラス」が開設された。女性の就職相談が年々、増加傾向にあったため、個別相談のほか、経理事務など実践的な能力開発のプログラムも充実させた。特に力を入れるのが、子育てや介護の経験を持つキャリアカウンセラーによる個別相談。担当制で、相談時間も45分と長めにしている。

 どういう働き方なら子育てと両立できるのかなど、具体的なイメージを持ち、働き方を自分で決めてもらう手助けをする。東京しごと財団しごとセンター課の近藤豊久課長は「準備の入り口にいる女性は自分が本当に働けるのか、不安が大きい。ブランクがあっても大丈夫と納得できるよう、丁寧な支援を心掛けたい」と話した。

 (福沢英里)

再就職を考える女性たちが集まった「ママたちの井戸端会議」=名古屋市中村区のあいち子育て女性再就職サポートセンターで
再就職を考える女性たちが集まった「ママたちの井戸端会議」=名古屋市中村区のあいち子育て女性再就職サポートセンターで