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【暮らし】<もう一度働きたい>(上) ママインターンシップ

2014/09/05

 「実習期間があったから一歩踏み出せた。自分の存在が認められ、毎日が充実しています」

 賃貸物件のトラブルを代行処理する「エース管理」(名古屋市中区)で、保険の申請事務を担当する正社員の新保友理佳(にいほゆりか)さん(44)。3月に再就職したばかりだが、今では職場にすっかり溶け込んでいる。

 30代初めに結婚するまで、証券会社の窓口や保険会社で査定の仕事をしていた。子ども2人が就学すると「もう1度何かしたい」と思うように。ブランクは12年。仕事の経験年数を上回っていた。

 就職活動を始めたが、年齢やパソコンの経験がないことがネックだった。そんなとき、経済産業省の再就職支援制度「ママインターンシップ(職場実習)」を知り、紹介されたのが今の職場だった。退社時刻は希望の午後5時より1時間遅かったが、実家の親の支援もあるため、折り合いを付けた。ただ、職場は手書きとファクスからパソコンとメール中心に様変わり。付いていけるか心配したが、2月から1カ月間の実習で操作にも慣れた。

 「『お帰り』は言えなくなったけど、子どもが『ママお帰り』と言ってくれる。皆に感謝しています」

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 この制度が始まった昨年度は、全国で2869人が実習に参加。うち1092人が実習先に、247人が他の企業に再就職した。制度本来の目的は優秀な人材を確保しにくく、採用や育成の負担も大きい中小企業の支援。担当の中小企業庁は就業経験があり、能力はあるのに今は働いていない主婦層を企業と結び付け、職場の活性化も狙った。

 エース管理では昨年度から11人の実習を受け入れ、7人を採用した。「レベルの高さに驚いている」と高山亜衣子社長(40)。子育て中の女性については「ブランクは空白ではない。子育てしながら仕事に必要な能力に磨きをかけたのだと思う」と話す。

 また、中小企業の経理を代行する「I&Rビジネスアシスト」(東京都新宿区)は昨年度、経理経験者の実習を受け入れ、1人を採用。人事担当の北川三亜希(みあき)取締役(40)は「勘を取り戻すのに時間がかかるのは仕方ない。それでも新入社員に一から十まで教えるより早い」と即戦力に期待する。週2日勤務もOKで、主婦の採用を今後も続ける予定だ。

      ◇

 実習をした約半数が就職に結び付いたのは、参加者の希望や条件を聞き、企業を仲介する会社の存在が大きい。その一つ、人材派遣大手のパソナで、東海地方を担当する横山佑佳(ゆか)さん(28)は、「自分がどこで何をするかイメージできないまま、とりあえず来る人が多い」と話す。

 勤務時間や通勤範囲を全く考えていないケースも目立つ。この場合は「面談しながら申し込んだ人と条件を整理していく」という。職場の雰囲気や会社の考え方と合うかどうかもポイントだ。「勤務できる時間帯だけでも考えて。それから家族のサポートを得られるかどうか。後で反対されるケースもあるので、話し合った方がいい」とアドバイスしている。

(小中寿美)

      ◇

 妊娠や出産で仕事を辞める女性は約六割。少子化社会でこうした女性の活躍に期待は高まるが、ブランクをどう埋め、育児とどう両立するのか-。支援の取り組みを通じ、再就職の現状を2回に分けて紹介する。

【ママインターンシップ】
正式名は「中小企業新戦力発掘プロジェクト」。主婦だけでなく独身女性や男性も参加できる。育児や介護で一度退職した人の場合は、1年以上の就業経験が必要など条件がある。実習は2週間~3カ月、1日4~8時間。日額5000~7000円の助成金が支給される。本年度の実習開始期限は今月末。問い合わせは事務局の日本財団=電03(6435)5217=へ。

12年のブランクを経て、3月に再就職した新保友理佳さん(左)と社長の高山亜衣子さん=名古屋市中区で
12年のブランクを経て、3月に再就職した新保友理佳さん(左)と社長の高山亜衣子さん=名古屋市中区で