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【経済】中小64%が賃上げ「人手確保のため」最大要因

2014/08/16

 経済産業省は15日、中小企業と小規模事業者の賃上げに関する調査結果を発表した。回答した約1万社のうち2014年度にベースアップなどで正社員の平均賃金が上昇する企業は前年度比7・7ポイント増の64・5%となった。景気回復に伴う業績改善に加え、賃上げ企業の75・7%が「従業員の定着・確保」を理由としており、中小の深刻な人手不足が背景にありそうだ。

 ブロック別では中部が8・9ポイント増の69・5%となるなど全地域で前年度を上回った。茂木敏充経産相は15日の記者会見で「経済の好循環が地方へも着実に波及している」と強調した。

 中小の賃上げは地域経済を下支えする効果が期待できそうだが、業績が上向かない中で人手確保のため賃上げに踏み切った企業には経営の圧迫要因になる可能性がある。

 回答企業のうちベースアップ実施を決めたのは23・4%で、その他は定期昇給やボーナス上積み、月給の増額などで平均賃金が上がる。経産省が五月に発表した大手企業の調査では、ベースアップ実施は43・0%、ボーナス増などを含めた平均賃金の増加は92・2%に上り、大手と比べると中小の賃上げはまだ遅れているようだ。

 中小の賃上げ理由(複数回答)のトップは人材確保で、業績回復の従業員への還元(28・9%)、消費税引き上げへの対応(21・3%)が続いた。企業の個別意見では「優秀な人材確保で苦戦を強いられたため」「消費税が引き上げられた中で子育て世代の負担を軽減するため」との声があった。

 地域別では、賃上げ企業の割合が最も高かったのが中部で、68・4%の近畿、63・4%の中国が続く。東日本大震災からの復興途上にある東北は62・8%、沖縄は59・7%で最も低かったが前年度からは大幅上昇した。

 経産省はアベノミクスの効果を確認するため、中小などを対象に調査を実施。13、14年度の賃上げ状況に関する調査票を6月に全国3万社に送り、7月下旬までに1万380社から回答を得た。

【中小企業の賃上げ】 安倍政権は賃上げが消費活性化と企業の業績改善につながる「経済の好循環」を目指し、経済団体を通じて、ことしの春闘での賃上げを強く要請。その結果を検証するため、経済産業省が賃上げ状況を調査し、大企業は5月に中間報告が公表された。中小では定期昇給などの賃金制度がない企業も多く、今回発表された調査では、賞与増額なども含めた平均賃金上昇を賃上げとして集計した。