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【経済】追跡 人手不足/トラック業界 求む 若手、女性

2014/08/06

大手、好待遇アピール

 景気回復で物流が戻りつつあるトラック業界だが、若手を中心に人手不足が深刻化している。長時間の運転やきつい荷役などのイメージが広がり、中小では求人を出しても集まらない。大手はラジオ広告などで好待遇をアピールして、経験者の転職を呼び込む作戦に出ている。(石井宏樹)

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 「しっかり稼いで、しっかり休みたい。定年まで安心して働きたい。そんなあなたに、西濃運輸では大型ドライバーを緊急募集しています」

 商業物流大手の西濃運輸(岐阜県大垣市)は同業他社に先駆け、昨年2月と今年2月、転職希望者向けのラジオ広告を出した。長距離の大型トラック運転手が車内で聞く午後9時~午前2時に絞り、県域をまたいで聞き続けられる全国ネットのラジオ局を選んだ。

 給与や休みなど大手の安心感を直接、訴え、希望者は2回で210人ほど集まった。親会社「セイノーホールディングス」人事部、渡辺久人課長は「それなりの反応があった」と手応えを感じている。

 大型車の運転手は運転免許保有者全体の1割弱しかおらず、新規の大型免許取得者は10年前の約1万2000人から、2012年度は8000人に減っている。今は切迫した人手不足ではない西濃運輸だが「他社と違うことをやって、中長期的には人数を確保しなければいけない」(渡辺課長)という。

 国土交通省によると55%のトラック運送業者が人手不足を感じており、今後は60%の業者が「不足を感じるだろう」と答えている。

 特に中小では深刻さが増している。自動車運送のニシカワ運輸(愛知県豊田市)では、リーマン・ショックで仕事が減り、28人いた運転手を20人にした。アベノミクスで乗用車の需要が回復し、ハローワークに求人を出すが、石田典子社長は「若い人の応募はほとんどなく、人のやりくりが大変」と話す。

 自動車産業の求人が多い愛知県や、復興需要が高まる東北地方では工場や建設現場と奪い合いになり、働き手が運送業界に流れてこない。石田社長は「運転手は労働時間も長く、力仕事もある。工場の方が家族も安心するのではないか」となげく。「若い人が入ってこないと業界の先行きが心配。給与や保険など労働の条件や環境を整えるしかない」と話した。

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◆国、トラガール倍増へ

 国土交通省は若手と女性ドライバー増加を課題としている。就業者の年齢構成を見ると、40~54歳の中年層が全産業平均で33・5%なのに対し、貨物運送業では42・3%と高齢化が著しい。

 女性の進出も遅れており、全産業での女性就業者の割合は42・8%だが、貨物運送ドライバーで2・4%、バスなど旅客運送ドライバーでは2・2%にとどまる。

 国交省は2020年までに女性トラック運転手を倍増する目標を掲げる。女性ドライバーの愛称を「トラガール」とし、8月末をめどに自動車局ホームページに「トラガールサイト」を開設。女性運転手のインタビュー記事を掲載し、女性の就業希望者の関心を高めようとしている。

荷積み作業中のトラックが並ぶ西濃運輸の物流拠点。ラジオ広告で運転手の確保に努める=岐阜県大垣市で
荷積み作業中のトラックが並ぶ西濃運輸の物流拠点。ラジオ広告で運転手の確保に努める=岐阜県大垣市で