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【社会】ひとり親支援 大幅見直しへ 在宅副業4分の1止まり

2014/08/04

 経済的に困窮しやすいシングルマザーらにパソコン技術などを身につけてもらい、自宅での副業を支援する厚生労働省の事業が「費用対効果が低い」として、大幅に見直されることが分かった。

 5年間で総額170億円を投入したが、在宅の仕事に就いた人は4分の1にとどまり、うち6割の平均月収はわずか5000円以下。事業を検証した同省の有識者検討会が「想定した成果を上げておらず、このままの形での継続は妥当ではない」と指摘した。子どもの貧困問題で、ひとり親家庭への支援の重要性が叫ばれる中、委託先の企業などに任せきりで、実施状況を厳格にチェックしなかった責任が問われそうだ。

 事業は2009~13年度に実施。都道府県などが公募で選んだ人材派遣会社やIT企業などに委託し、国の基金で全額を賄った。企業側はテープ起こしやウェブデザインなどの技術訓練を行い、参加者が自宅でできる仕事を別の地元企業などから受注する仕組み。

 訓練期間は原則18カ月。企業側には訓練や仕事の受注にかかる経費を支払い、参加者にも月額1万5千~5万円の訓練手当を支給する。

 検討会は09~12年度に21自治体が実施した24事業(約56億円分)を検証。参加者約2800人のうち、訓練を終えたのは約2000人で、在宅での就業につながったのは約760人だった。このうち月収が分かった約500人を分析すると、約6割は5000円以下で、厚労省が当初目指した5万円以上の人は1割程度。参加者1人当たりの事業費は、最高で約846万円に上った。

 検討会が近くまとめる報告書では「事業の趣旨は有意義だ」としつつも「参加者の技術を上げ、仕事を開拓する企業側の能力、実力の差も成果に影響した」と指摘。仕事の受注を担う専任者を配置したり、地元企業への売り込みを積極的に行ったりしたケースが1部にとどまったことを要因として挙げている。

【ひとり親家庭の貧困】
厚生労働省の調査では、全国の母子家庭は約124万世帯、父子世帯は約22万世帯。パートなど非正規で働く人は、父親の8%に対し、母親は約50%に上る。平均年収は父親約360万円、母親約180万円。ひとり親世帯の貧困率は54・6%と深刻だ。政府が近くまとめる子どもの貧困対策大綱には、ひとり親の就労機会の確保も盛り込まれる。