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【社会】ブラックバイト労組で対抗 学生なのに過酷勤務、重い責任

2014/08/02

 学生アルバイトなのに、学業に支障をきたすほどの重労働を強いられたり、正社員のような責任を課されたりする「ブラックバイト」が広がっている。問題の解決を目指し、学生たちは1日、労働組合のブラックバイトユニオンを結成した。正社員を減らし基幹業務の担い手がほかにいない企業が増えている背景がある。(東京社会部・小林由比)

 都内の男子大学生(21)は6月から、牛丼チェーンの店で深夜バイトを始めた。深夜帯は2人体制で営業することになっているのに、5回目で1人勤務をさせられた。メニューの写真を見ながら調理。肉の量や盛り付け方がどうしても分からず、スマートフォンで調べると、同じような質問をしている人がいて、その回答も見つけた。

 昨秋に3カ月勤務した衣料品店では、制服として商品約5000円分を購入させられた。勤務日が決まると、休みたいと申し出ても「代わりを探さないとだめ」と言われた。

 勤務可能日として申告した日すべてが勤務日となり、出席日数が足りずに単位も落とした。学生側も、経済状況の悪化で親の仕送り額が減る傾向にあり、劣悪な職場でも簡単に辞められない事情がある。「仕送りだけでは足りない。授業と両立しながらやっていきたいが、なかなかそういうバイトがない」と漏らす。

 一昨年に来日し、都内の大学に通う中国人の男子留学生(24)が6月まで働いたドラッグストアは、レジの列が途切れることがなかった。夜はアルバイト3人で商品の補充や呼び込みもする。「明らかに人手不足なのに、これくらい早く慣れてできるようにならないとと怒鳴られたりもした」。午後11時の閉店時間には全員にタイムカードを押すよう指示があり、その後はサービス残業をさせられた。

 NPOに労働相談していた学生らが中心となり、労組をつくろうという話がまとまった。共同代表の佐藤学さん(27)は「経済的に苦しく、バイトを簡単に辞められないことに付け込んで過酷な働き方をさせている企業が多い。実態調査や労働法を学ぶ場もつくっていきたい」と話す。

 ユニオンは3日午後1~4時、弁護士らによる無料の相談ホットラインを設置する。フリーダイヤル(0120)987215。

【ブラックバイト】 学生が授業に出てこられない事情を知り、ブラックバイトと名付けた中京大の大内裕和教授は、学生であることを尊重しないアルバイトと定義する。低賃金であるのに、正規雇用並みの義務やノルマを課されたり、学生生活に支障をきたすほどの労働を強いられたりする。残業代の不払いや休憩時間を与えない、不合理な罰金の請求などの違法行為がみられることも多い。

ブラックバイトユニオンを結成し、記者会見をする佐藤学共同代表=1日、東京・霞が関の厚労省で
ブラックバイトユニオンを結成し、記者会見をする佐藤学共同代表=1日、東京・霞が関の厚労省で