中日新聞CHUNICHI WEB

就職・転職ニュース

  • 無料会員登録
  • マイページ

【暮らし】女性の起業、専門家が応援 税理士や公認会計士など

2014/07/11

 地域で起業を考える女性を支援する動きが広がっている。国や自治体に加え、同じ女性の税理士や公認会計士などの専門家たちが、より具体的なアドバイスをと相談業務に力を入れている。支援内容は資金援助にとどまらず、起業後のフォローや悩み相談ができる地域のネットワークづくりに軸足を移している。

 「活動をもっと知ってもらわなきゃ」

 「基本的なことから資金繰りまで、やはりお金で悩む女性は多い」

 愛知県を中心に活動する若手の女性税理士や弁護士、公認会計士、司法書士で二月に活動を始めた「からふる・女性応援士隊」。メンバーが七月、名古屋市内で集まり、今後の活動内容やPR方法などについて話を弾ませた。

 経営や財務、法律などに詳しい専門家の立場から、起業を目指す女性を支えようと六月、初の無料個別相談会を開催。予約制で一人四十五分と長めに時間を取り、相談者の話に耳を傾けた。メンバーの一人で名古屋市の税理士、川村美香さん(41)は「女性の視点を生かし、時には他の仲間と連携しながら、一緒に考える伴走型の支援を目指したい」と意気込む。

 応援士隊は、あいち男女共同参画財団と、社会貢献を目指す税理士など「専門士業」の有志による協働事業。従来、財団は「何か始めたい」と考える女性の支援では、適性の見極めや起業に向けた動機付けなど、主に“入り口”部分の相談業務をしてきた。

 ただ、起業でも趣味の延長と考える人から、利益を出して納税する覚悟のある人まで、意識の差は大きい。財団の青木清人専務理事は「具体的に起業に向けて動き始めた女性には、応援士隊の実務的な相談会を勧めるなど、ニーズに応じた支援が可能になった」と話す。次回は八月と十月に相談会を予定している。

      ◇

 相談業務のほか、資金調達をテーマにしたセミナーも開くのは「なでしコンサル東海」(名古屋市北区)。税理士や中小企業診断士、社会保険労務士などが名を連ねる。専門家に相談する利点として岐阜市の税理士、篠田陽子さん(41)は金融機関から融資を受ける際に必要な申請書を例に挙げる。「自分の主観に頼らず、第三者の評価や中立的な意見を踏まえた事業内容や販売計画、具体的な資金計画を書ければ、説得力が増す」と説明する。

 地域での仲間づくりの必要性も強調する。名古屋市のマナーコンサルタント、伊藤貴久美さん(52)は「困ったとき、起業家としてだけでなく、母や妻、一人の女性として抱える悩みに寄り添い、応援してくれる仲間がいるのは心強い支えになる」。

    ◇

 国内では二〇〇〇年度まで、中小企業の開業率が廃業率を上回っていたが、近年は事業所数が増えず、開業率が下回ることも。安倍政権が昨年発表した成長戦略には、「開業率、廃業率の現状約5%から、米、英国レベルの10%台に向上させる」という具体的な数値目標が掲げられた。

 中小企業庁は本年度、「地域創業促進支援事業」として、全国三百カ所で創業スクールを始める。創業の基礎知識を学び、ビジネスプラン作成の支援が受けられ、女性起業家コースも用意されている。

 また、千葉県市川市や川崎市、岐阜市、金沢市など、女性向け創業塾やセミナーを計画する自治体も増えてきた。市川市では、市内の千葉商科大や地域のNPO法人が国の支援を受け、女性に特化した起業家支援事業を五月に始めたばかり。女性の中小企業診断士による月一回の相談窓口を設け、六月末には起業セミナーも開いた。

 起業を考える際に重視されるのが、こうしたセミナー受講による意識の向上や仲間づくり、補助金制度などの活用によるリスク軽減とされる。市川市商工振興課は「ライフスタイルの変化で、女性の起業が選択肢の一つになる時代。女性ならではの発想による斬新な事業には、市の補助金で応援していく」とPRする。

(福沢英里)

今後の取り組みについて話し合う「からふる・女性応援士隊」のメンバーら=名古屋市東区のウィルあいちで
今後の取り組みについて話し合う「からふる・女性応援士隊」のメンバーら=名古屋市東区のウィルあいちで