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【地域経済】追跡/人手不足 人づくりビジネス活況

2014/07/08

飲食、小売り 若手定着へ模索

 人手不足が深刻化する中、従業員が長く働ける職場づくりを目指す人材育成ビジネスが注目を集めている。名古屋でも飲食店や小売りなどサービス業を対象に社員や従業員を研修するサービスが登場し、中小企業向けに離職率の高い若手社員の定着を支援する企業もある。(中村彰宏)

 「今日のキーワードは行動です。自ら行動を見せていかないと伝わらない」

 今月2日、名古屋駅前にあるビルの一室で飲食店の店長ら約20人が、講師の言葉に熱心に耳を傾けていた。

 テーマは「スーパー店長心得」。マクドナルドやユニクロで人材育成を手掛けた有本均氏が、従業員に信頼される店長になるポイントなどを3時間にわたって説いた。

 参加した名古屋市内の居酒屋店長(37)は「ここ1年ほど人手不足が急激に進み、募集しても人が集まらない。従業員を辞めさせないために何が必要か今後も学びたい」と話す。

 講座は研修サービス会社「ホスピタリティ&グローイング・ジャパン」(東京)が運営する「グローイング・アカデミー」。同社は2012年にサービス業に特化した研修を始めた。人手不足を背景に「離職率が高く人材が育たない。店長に従業員教育を身に付けさせたい」と望む企業が増え、現在は500社と契約を結ぶ。

 厚生労働省の昨年の調査では、大卒新入社員の入社3年以内の離職率は3割を超える。業種別では、飲食を含むサービス業が51%、小売りが38%だった。

 「働く側も従業員教育を望んでいる。人を育てる仕組みがあれば離職率は下がる」と学長の有本氏。7月に開いた名古屋校が全国4校目で、年内に横浜でも開校を予定している。

 アカデミーの人気の理由の1つが低料金。受講者が50人以下なら1社あたり月額5万4000円で約100の講座を何度でも受講できる。同社によると、一般的な研修にかかる費用の5分の1程度。「コストの問題で実施できない企業が多い。店舗が少ない企業でも社員に研修を受けさせることができる」(営業担当者)。名古屋校はすでに40社と契約し、本年度中の会員150社を目指している。

 人材派遣などの「テンプスタッフ・ピープル」(名古屋市)は、中小企業を対象に人材育成の支援に取り組む。

 名古屋市の「なごや若手社員定着支援事業」を受託。6月末に参加企業の募集を始め、8月から来年3月まで若手社員や上司の研修、企業への出張相談、セミナーを無料で実施する。

 広報担当者は「人材育成の体制を整えることができない中小企業をバックアップしたい」と話している。

飲食店長らに講義するグローイング・アカデミーの有本均学長=名古屋市中村区で
飲食店長らに講義するグローイング・アカデミーの有本均学長=名古屋市中村区で