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【暮らし】「性別役割」解消求める セクハラの新指針

2014/06/27

 東京都議会の塩村文夏議員が妊娠・出産期の女性への支援を質問中に「早く結婚した方がいい」「おまえが産め」などのやじを受けた問題は、女性は結婚して子どもを産むのが当然という性差別や、性別による役割分担意識の根深さをあらわにした。七月から施行される改正男女雇用機会均等法の新指針は、このような意識に基づく言動がセクハラにつながると指摘。同性間の言動もセクハラにあたることを明記し、事業主に周知、啓発を求めている。

 今春、愛知県の医療関連会社に入社した女性(30)は、来客や社員が飲むお茶を給湯室でいれる当番が女性だけに割り当てられていることに驚いた。社員は数千人で職種や年齢に関係なく、週替わりで担当。先輩の男性に聞くと慣習で、過去に上司から「女に任せておけばいい」と言われたという。女性は上司に抗議し、労働組合から問題提起することに。女性は「初めて『差別された』と感じた」と話す。

 昨年改正された男女雇用機会均等法のセクハラ指針では、背景や原因に男女の役割分担意識があると指摘。事業主に就業規則などを通じ、職場からなくすよう啓発を促した。厚生労働省は「男のくせに」など、セクハラにつながる言動の具体例を示している=表。

 女性問題に詳しい東京の弁護士、楓(かえで)真紀子さん(39)によると、これらは直接の性的な言動とまではいえないため、職場で軽く扱われることもある。しかし、新指針ではこうしたセクハラなのか微妙な場合も、事業主に対応するよう求めており、楓さんは「指針への明記で被害者が声を上げやすくなるのでは」と期待する。

 愛知労働局が二十三日、名古屋市内で開いた改正法のセミナーは満席で、百四十社が参加。自動車部品製造業の総務担当の三十代男性は、来客へのお茶出しは女性と決められており、取引先の親会社からセクハラへの対応強化を求められているという。「行動規範に盛り込んだり、研修会を開いたりして意識を変えていきたい」と話した。

 雇用環境の改善に取り組む「21世紀職業財団」(東京都文京区)は、ホームページで性別役割分担意識の有無をチェックできるリストを公開。採用から職場への配属、評価などさまざまな設定で確認できる。

      ◇

 「おまえ、オカマじゃないのか。そんなナヨナヨしていたら、嫁さんもこないし、昇進もできないぞ」

 大阪市の団体職員の女性(28)は二年前に勤めていたIT会社で、先輩の男性に上司がかけた言葉に耳を疑った。男性社員は寡黙な性格で、周囲から「女性経験はないのでは」などとからかわれていた。別の男性社員は、子どもが複数いる上司から「早く子どもをつくった方がいい」と言われ、他の社員の前で自らが無精子症であることを告白。とてもつらそうな表情だったという。

 職場のハラスメント研究所(東京都文京区)の金子雅臣所長(70)によると、同性間のセクハラ事例として、上司が部下を無理に風俗に誘う▽宴会で裸踊りをさせる▽男女関係を詮索する▽独身を気にしている同性に結婚しない理由をしつこく尋ねる▽男女関係がだらしないなど性的なうわさを流す-などを挙げる。

 金子さんは「飲み会での男同士の下ネタ話なども、『草食系男子』のように関心の低い人や、人前で話すことが嫌な人もいる。その温度差を理解しなければいけない」と話す。

 同性愛者ら性的少数者の働きやすい職場づくりを目指しているNPO法人・虹色ダイバーシティ(大阪市)代表で、レズビアンの村木真紀さん(39)は「自分の性的指向などを話せない人もいる、という想像力を働かせてほしい」と話す。

(山本真嗣)

 <セクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)>職場での相手の望まない性的な言動。上司が部下の体を触ろうとしたとき、部下が拒否したために不利益な配置転換をしたり、昇進を見送ったりするなどの「対価型」と、性的な言動で職場の環境が不快なものとなり、働く意欲が低下する「環境型」がある。

愛知労働局のセミナーで、新しいセクハラ指針の説明に耳を傾ける企業の担当者ら=名古屋市中村区で
愛知労働局のセミナーで、新しいセクハラ指針の説明に耳を傾ける企業の担当者ら=名古屋市中村区で