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【愛知】80歳添乗員はつらつ 千種の宇野さん 現役50年

2014/04/05

あすはインドネシアへ

 1月に80歳の誕生日を迎えた宇野せき子さん=千種区=は今も現役で旅行会社に勤務している。国内を中心にツアーの企画から添乗員まで何でもこなし、仕事歴はざっと50年。若さの秘訣(ひけつ)は「別にない。気持ちの問題でしょ」。「元気は気から」だそうだ。(多園尚樹)

 中区大須4の富士ツーリストのオフィスで、宇野さんがモニターを苦々しそうに見つめる。「パソコンだけは苦手なのよね」。しかし、伸びた背筋と白い肌は60代にも見えない若々しさだ。

 かつて夫(故人)が旅行会社を経営していたため、自然とこの業界に入った。会社は個人客を中心に業績は順調だったが、宇野さんが50代半ばに差しかかるころ、経営が傾き倒産した。

 それから昼は小さな旅行会社で働き、夜は料理屋の調理場で汗を流した。そんな日々が数年続き、知人の紹介で今の会社に移ったのは、還暦を過ぎた62歳の時だった。

 担当は主に国内旅行で、企画や交渉だけでなく、添乗員もこなす。西山譲社長(64)は、長年培ってきた経験や人間関係を生かした仕事の実績だけでなく、「ほかの社員にとっては同僚でもあり、母親あるいは祖母のような関係でもある。社内の潤滑油のような欠かせない存在」と高く評価する。

 そんな元気な宇野さんも昨年6月には、自宅で転んで背骨の胸椎を折る事故に遭った。「痛いって寝込んだらそれでおしまいになっちゃう」。10日間だけ休みをもらい、痛みを押して出社した。

 「決して平たんな道を歩んできたわけじゃない。その気持ちの強さがあるから、今もやれるんだと思う」。今月6日には、インドネシア旅行に付き添う。東日本大震災や原発事故の被災地を巡るツアーの企画も忙しい。

 「とにかく人に迷惑を掛けないような死に方をしたいだけなんだけどね」。冗談めかして笑うその表情は、活力に満ちあふれていた。

若い社員と旅行プランについて話す宇野せき子さん(中)=中区大須4で
若い社員と旅行プランについて話す宇野せき子さん(中)=中区大須4で