2013/02/10
福井の会社 滑り止め開発
降雪時に、車いすで街に出るのは難儀だ。そこで、両輪にはめるだけでタイヤが思うように操れるようになるカバーを、福井市の撚糸(ねんし)会社が考案して売り出した。特殊な布にゴムを織り込む工夫で雪に勝つ。「重度の障害がある娘に雪を見せたい」という奈良市の女性の思いに応えた。(林朋実)
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「車いす用の滑り止めはできませんか」。2011年3月、内田撚糸社長の内田一朗さん(53)のもとに突然、奈良市の大村敦子さん(47)から電話がかかってきた。
大村さんは、同社の靴用滑り止めをインターネットを通じて買い、北海道で使った。「雪道は想像以上につるつるで全然動けなかったのに、着けたら走っても怖くない」と性能に驚いた。
布製のベルトを靴に巻くだけだから、建物内で着けっぱなしでも違和感はなかった。そこで「これの車いす用があったら便利かも」と思い立った。
「いけるだろう」と請け負った内田さんだが、車いすの知識は皆無。大村さんと電子メールをやりとりし、2人3脚で開発を進めた。大村さんを通じて車いす販売店からタイヤの種類などの情報をもらった。脳の障害で幼いころから車いす生活を送る次女志芳子さん(15)を、冬の北海道に連れて行きたいという大村さんの思いも知った。
半年後にできた試作品は、大村さんが志芳子さんの車いすに取り付けて耐久性を調べた。雪のない奈良の道路で何カ月も付けっぱなしにしても、ぼろぼろにはならなかった。大村さんは「おでかけリング」と名付け、昨年の秋に商品化した。
「第1号のお客になります」と言う大村さんに、内田さんは最初の1本を贈った。色は、ピンク色の志芳子さんの車いすによく合う茶色を選んだ。
「装着感や使用状況を、いつも長文のメールで教えてくれた。自分では思いもよらなかった商品ができたしね」
親子での北海道旅行はこれからだが、「雪道で付けるのが楽しみ」と話す大村さん。「これがあれば急な雪にも困らないし、旅行の選択肢も広がる」と、車いすを使う人に広まることを願う。
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「おでかけリング」
おでかけリングは、ポリプロピレン系の布に特殊なゴムが織り込んであり、装着すると車輪に対してジグザグに巻き付いたようになり、滑りを止める。取り外しは障害者1人では難しいが、介護者がいれば数分で可能。サイズは3種で全6色。1万2600円。問い合わせは内田撚糸=電0776(93)2052=へ。
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